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佐々木俊尚の未来地図レポート 2026.6.29 Vol.915
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【今週のコンテンツ】
特集1
エージェントAI時代にメディアが生き残るたった一つの冴えた方法
〜〜人間社会とAIが融合していく未来を考える(12)
特集2
読者の方々からのいろんな質問に答えてみるシリーズ
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■ 特集1
エージェントAI時代にメディアが生き残るたった一つの冴えた方法
〜〜人間社会とAIが融合していく未来を考える(12)
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2010年代にインターネット広告のテクノロジーが急速に進化し、「アドテク」と呼ばれるようになった結果、なにが起きたのか。広告は消費者をターゲティングし、さらに自社サイトを見てくれた人をどこまでも追いかけて広告を打っていくリターゲティングなどの技術も開発され、広告効果が著しく上がったのは間違いないでしょう。
しかしアドテクの進化は、広告というものの価値を根底から破壊したとも言われています。かつてテレビの黄金時代には広告は文化やアートのひとつとして扱われ、素晴らしいコンテンツでもありました。しかし皆さんもご存じのように、現在のウェブ広告は追い払っても追い払ってもポップアップして消えてくれない、まるで鬱陶しい蚊のような存在になってしまっています。
アドテクにおいては、広告はターゲットしたユーザーに自動配信されるので、消費者はあくまでも数字として扱われるだけです。広告主から消費者の顔は見えないし、自分の広告がどのメディアに配信されているのかもすぐにはわからない。だから質の低いメディアに広告が載ることで、企業のブランドイメージが悪くなってしまう危険もあります。以前の話ですが、違法な漫画海賊サイト「漫画村」に大手企業の広告が配信されていて物議を醸したのは、典型的なケースです。
ウェブメディアの側にも、メディアのUXが最低になってしまうというダメージが起きています。あまりにもポップアップ広告が多すぎて、その記事を読むのが嫌になったという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
それでも、アドテクは進化し広まり続けてきました。広告効果が確かにあったからなのですが、これは実のところ迷惑メールと同じ構造のビジネスです。
迷惑メールはだれもが迷惑していますが、決してなくなりません。それどころかAI生成のために以前よりもずっと増え、巧妙にさえなっています。アマゾンからの偽メールや怪しげなビジネスの勧誘などのメールで受信ボックスはあふれており、「こんなものを信じる者がいるのだろうか」とたいていの人はいぶかしげに思うでしょう。しかし10万人にひとりか、100人にひとりぐらいは、偽情報や怪しい商売をうっかり信じてしまう人がいるのです。
メールの配信にかかるコストなどたかがしれているので、そのぐらいの確率でも何人か何十人かぐらいが騙されれば、迷惑メールのビジネスの収益は成り立ってしまうのです。アドテクもこれと同じ構図。ひとりひとりの消費者への効果は大きくないが、大量に広告を配信すれば、そこそこの人数に効果が出てしまうということなのです。
だからアドテクを駆使したターゲティング広告は、本来のあるべき広告とはまったく異なるもので、こんなものは「インターネットの原罪」だという指摘も出てきました。
★The Internet’s Original Sin
https://warzel.substack.com/p/the-internets-original-sin?utm_source=url
最初期のウェブブラウザ「モザイク」、そして「ネットスケープ」を開発したマーク・アンドリーセンも、この時代にブラウザに決済を組み込むことができなかったことを「大失敗だった」と後に回想しています。銀行やクレジットカード会社と提携できなかったために、広告に頼らざるを得なくなって、その後のアドテクの堕落を招いたというのです。
とはいえ、当時のインターネットで「記事を一本読んだら、いくばくかを支払う」というマイクロペイメントが人びとに受け入れられたかというと、そこは文化的にもかなり難しかったのではないかと思います。ただ2020年代の現在だと、たとえば日本のnoteのように一本の記事に100円〜の少額決済をPayPayなどで行える仕組みが普及しており、少額課金を利用している人は今ではかなり多いのではないかと感じます。
さて、2026年現在に話を戻しましょう。AIエージェントが登場してくるまで、ウェブメディアのビジネスモデルは広告に加えて、サブスク(月額課金)の比率も拡大させてきました。日本では新聞社が先行し、最近は出版社系のメディアも続々とサブスク化が進んで、これまで無料で読めていた記事が有料会員しか読めなくなった、という方向に進んでいるようです。