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佐々木俊尚の未来地図レポート 2026.6.1 Vol.911
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【今週のコンテンツ】
特集1
「無限の記憶を持つ思考能力」という新たな知能の誕生
〜〜人間社会とAIが融合していく未来を考える(8)
特集2
わたしが濫読してるさまざまなKindle本を紹介
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■ 特集1
「無限の記憶を持つ思考能力」という新たな知能の誕生
〜〜人間社会とAIが融合していく未来を考える(8)
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東芝から分社してスタートした半導体企業キオクシアの株価が、記録的に上昇して話題になっています。5/29段階で時価総額はなんと36兆円。三菱UFJフィナンシャルグループを抜き、トヨタ、ソフトバンクについで国内3位になったというから驚かされます。
この背景にはAIに牽引された半導体市場の急成長があるわけですが、AIの心臓部分はエヌビディアが市場を寡占している最先端のGPU(画像処理半導体)であり、キオクシアが作っている普及版のNAND型フラッシュメモリまで高騰しているのはどういうことだろう、という疑問も感じます。このあたりの疑問は、先日わたしも出演していたアベマプライムでわかりやすく説明されていました。
★キオクシアってどんな企業?“AI活用ベタ”の日本の勝ち筋は?半導体アナリストが解説
https://buff.ly/TQRNPQ2
メモリには、データを一時的に保存して高速処理するDRAMと、データを長期保存するNANDがあります。前者が調理台で、後者が食品倉庫のようなイメージ。AIでは一般的にDRAM上でGPUが計算しているのですが、コストや消費電力がかかるのですべてのデータをDRAM上だけで扱うのは難しい。そこで本来は本棚だったNANDも調理台的に使えるようにすればいいのではないか、という考えかたが出てきました。
そこでキオクシアの出番です。アベマプライムでの半導体アナリストの大山聡さんの説明によると、「従来のNANDフラッシュはDRAMに比べ読み書きのスピードが1000倍遅かった。しかし、今回キオクシアが注目されているのは、従来のNANDフラッシュの100倍のスピードを持つ製品だ」。
エヌビディアは今、ストレージネクスト(Storage-Next)という構想を掲げています。従来のAIでは、CPUがデータをGPUに渡し、GPUが高速に計算するというしくみ。これはシェフとウェイターのたとえでよく説明されています。超優秀なシェフ(GPU)のために、ウェイター(CPU)が食品倉庫から食材をどんどん運んでくるのです。しかしウェイターは足が遅いため食材を持ってくるのが遅く、超優秀シェフは手が止まってしまう時間が生じてしまっていました。
だったらウェイターなんか使わずに、超優秀シェフが調理しながら、同時に食料倉庫から食材を持ってくるのも同時にやればいいじゃないか、というのがストレージネクストです。
つまりシェフ(GPU)が食料倉庫(NAND型フラッシュメモリ)を直接コントロールして、猛スピードで料理(AIの計算)を行うことが可能になる、という考えかたなわけです。この優秀シェフの速度に対応するためには、食料倉庫から食品を出せる速度も上げなければならない。キオクシアのフラッシュメモリは他社製品と比べそれにかなり対応できるようになっているという話なのですね。
さて、今回の話は半導体産業の未来についてではありません。このような方向性が、これからのAIにどのような地平を拓いていくのかというテーマです。
GPUが直接記憶媒体を制御して猛烈な速度で計算するようになっていくことは、AIが外部の巨大な記憶媒体と融合していくという意味あいも持っています。つまり「無限といえるほどの記憶容量を持った知能」の出現なのです。そしてこれは、人間の知能とはまったく異なる。
しかもAIの記憶は、人間が用意した学習データの積み重ねだけではなく、AI自身が生成するデータも含まれてきます。現在のAI生成データはチープなものが多く、学習データから排除すべきだというような議論もありますが、AI自身が進化していけばそういう課題も払拭していくでしょう。過去にも、たとえば人間の囲碁の王者を打ち負かしたディープマインドのAI「アルファ碁」は、過去の人間の対局データをすべて学習しただけでなく、自分自身との対局を無数にこなしたことによって新たな打ち手などを開発し能力を高めていったという事例があります。
AIエージェント同士が対話を重ねることによって、より高品質なAI生成データが次々と生まれ、知として積み重ねられていくようになる。AIによって記録が自己増殖していくという構図です。これまでの「情報社会」と言われる世界では、人間が情報を生成するのには限界があり、これが記録のボトルネックになっていたとも言えます。しかししかしAI時代には、AI自身が大量の情報を生成し始めこのボトルネックが解消するのです。