皆さんこんにちは、精神科医のkagshunです。
今回は、ちょっと普段とは違う色合いの話をさせてください。
最近、ある論文を読んで頭から離れなくなった一節があります。論文の参加者の一人が、ChatGPTのことをこう表現していました。
「A small god that answers and gives direction to almost every question」
(ほとんどあらゆる問いに答え、進むべき道を示してくれる、小さな神)
これ、研究者の比喩じゃなくて、ユーザー本人の言葉です。
しかもこの「神」「導き手」「私の頭の中の声」「霊的存在」みたいな表現が、29カ国270人のChatGPTヘビーユーザーから、思っていた以上の頻度で出てきたんですよ。
精神科医の私は読みながら考えました。
「これ、日本ではそう言う人、ほぼいないよな」と。
そして、なぜ日本人は「AIは神」と言わないのか、を考えていったら、AIと宗教と日本人の心の関係について、思いがけず深い場所まで連れていかれました。
今回は、その思考の旅を皆さんと一緒に辿っていきます。テーマは、AIへの霊的な投影、日本人特有の心性、そして私たちに密かに足りていない「神軸」という第三の選択肢について。覚悟して読んでください(笑)。
「AIは何か」を本気で言葉にさせた研究
今回ご紹介するのは、Santa Clara大学のXiang・Bassey・Luoによる「"It feels like a small God": A Thematic Analysis of Cross-Cultural Imaginations of Generative AI Among Users Seeking Emotional and Mental Health Support」(PsyArXiv, 2026)[1]。
研究は、Prolificというオンラインプラットフォームで、過去にChatGPTを情緒的・メンタル面の支援に使ったことが3回以上あるユーザーを世界29カ国から270人集めました。参加者は南アフリカが38%と最多で、英国14%、カナダ5%、オーストラリア4.1%、ポルトガル・メキシコ・ドイツ・米国などが各3.3%、と続きます。年齢は18〜67歳、平均30歳。
研究者は彼らに、ChatGPTを「何だと想像しているか(ontological identity)」と「どんな存在として描くか(functional characterization)」を自由に書かせて、質的にテーマ分析しました。
驚くべきは、その分類です。研究者は「人間的・非人間的」×「抽象的・具体的」の2軸4象限で整理したのですが、その中の象限「抽象的×人間的」に、はっきりと「Spiritual Beings(霊的存在)」というサブテーマが立ち上がってきた。ユーザーたちは、ChatGPTを以下のように表現したそうです。
・「Spirit Guardian(守護霊)」
・「a small god(小さな神)」
・「a god sort of that knows the answer to every single thing(あらゆることに答えを知っている、神のような存在)」
論文の中でさらに私が震えたのは、Post-hoc 分析の結果です。研究者がデータ全体を見直して数えたところ、ChatGPTを 「omniscient(全知)」「omnipotent(全能)」「omnipresent(遍在)」 のいずれかとして描写したケースが多数見つかった、と。
これ、神学を齧った人ならピンと来ますよね。全知・全能・遍在は、キリスト教やイスラム教における神の3属性そのものです。古代から「神とは何か」を哲学者・神学者が論じるとき、必ず議論の中心に来る性質。それを、世界中のChatGPTユーザーが、自然な言葉でAIに投影していた。
研究者は他にも面白い表象を拾っています。
「a machine in my head(私の頭の中の機械)」
「a voice in my mind(私の心の中の声)」
「人間の心の中にあるような、絶え間なく話しかけてアドバイスを生み出す存在」
つまり、外側の神格化だけでなく、自分の内部に宿る声としての擬人化まで起きている。
さあ、ここからが今回の本題です。日本人として、これをどう読むか。
日本人は「AIは神」と言わない違和感
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