気軽なフラット登山を、旅に組み込もうという提案~~オーバーツーリズムの時代に「点の旅」から「線の旅」へ 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.902

佐々木俊尚の未来地図レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 佐々木俊尚の未来地図レポート     2026.3.30 Vol.902 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.pressa.jp/ 【今週のコンテンツ】 特集1 気軽なフラット登山を、旅に組み込もうという提案 〜〜オーバーツーリズムの時代に「点の旅」から「線の旅」へ 特集2 読者の方々からのいろんな質問に答えてみるシリーズ 未来地図キュレーション 佐々木俊尚からひとこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 特集1 気軽なフラット登山を、旅に組み込もうという提案 〜〜オーバーツーリズムの時代に「点の旅」から「線の旅」へ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本でも京都や鎌倉などで顕著なオーバーツーリズムに対し、アンダーツーリズムというものが新型コロナ禍の前から一部で提唱されるようになってきています。混雑した観光地に行くのではなく、人の少ない地域でじっくりと旅を楽しもうという考えかたです。 では「人の少ない地域」を旅する魅力とはいったい何なのでしょうか。アンダーツーリズムの文脈では、その地域の地元住民になりきる気分に浸り、地元民しかい行かないような食堂や酒場に足を運んだり、スーパーや市場でローカルな食材を買ってキッチンつきの宿泊施設で調理したり、というような楽しみが提唱されています。さらにカヤックやダイビング、創作体験などのアクティビティもふくまれるでしょう。 そうした楽しみだけでもアンダーツーリズムには十分なのですが、わたしはここにもうひとつの要素を加えたいと考えています。それは「フラット登山を組み込んだ旅」という新しいコンセプトです。従来の旅行は、オーバーツーリズム化している観光地にせよ、アンダーツーリズムの静かな土地にせよ、あくまでも点と点をつないだものでした。観光名所から別の観光名所へ、旅館から旅館へ、体験できる施設から別の施設へ。つまり旅にはつねに目的地があり、目的地に到達することが旅の主な目的になってきたのです。 従来の「点」の旅を、「線」の旅へと変えてみませんか。 つまり目的地に到達することを目的とするのではなく、移動する過程そのものを楽しむ旅です。移動という行為、しかも自動車や鉄道、飛行機での移動ではなく、人間の最も身体的な行いである「歩く」ことによる移動そのものを体験として楽しもうという提案です。 昨年、わたしは岡山から鳥取へと旅しました。岡山・鏡野町の奥津温泉は、中国山地のふところの深い土地にある秘湯です。吉田喜重のアバンギャルドな恋愛映画「秋津温泉」(1962年)の舞台となったことでも知られていますが、よほどの映画ファンでないとこの作品自体ももう忘れられているかも。 ここの奥津荘に滞在し、なめらかで透明な湯につかりながら「明日は一日空いてる。何をしようかな」とわたしは思案をめぐらせていました。そこでふと思いついたのは、鳥取砂丘。岡山の北端に近いこの土地からは、鳥取県は目と鼻の先なのです。グーグルマップで調べてみると、鳥取の海岸にあるあの有名な砂丘までは、クルマで1時間半ぐらい。岡山駅前で借りていたカーシェアで行けば、軽く日帰りできそうでした。 そこでマップで鳥取砂丘をズームしてみると、砂丘エリアは海岸に沿って横に長い形状をしている。「これ、海岸に沿って横に長く歩けないだろうか?」と考えました。グーグルで検索してみると、以下のようなサイトが。 ★砂と風による奇跡の造形美「鳥取砂丘」を歩く 山陰海岸ジオパーク https://sanin-geo.jp/geotrail06/ このサイトから、pdfの地図もダウンロードできます。砂丘そのものの大きさはたいしたことがないけれども、砂丘の端から東に遊歩道が伸びており、岩戸漁港というところまで歩けばトータルで7キロあまり、2時間近く歩けそう。 「人の数はどうなのだろう?」というのも気になるところです。自然の中を気持ち良く歩くために大事なことは、自分と自然が生々しく向き合える状態を作ること。そのためには、なるべく人の姿が少ない道を選ぶことです。春秋の週末の高尾山がそうですが、繁華街の雑踏を人混みをかき分けて歩くような登山は、山歩きの楽しみを著しく減じています。わたしは人嫌いというわけではありませんが、自然の中を歩くときぐらいは人混みは避けたい。 SNSのクチコミなどをさらに調べてみると、鳥取砂丘の表玄関は砂丘会館などがあるスポット。ここには各種施設のほかに土産店やレストランなどが建ち並んでおり、大きな駐車場もあり、観光客が集中する場所になっています。観光客はここから歩いて砂丘を横切り、海岸沿いに丘陵状になっている馬の背の高台まで往復するのが一般的。言いかえれば、このルートを避ければ、砂丘にはあまり人がいない。

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