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佐々木俊尚の未来地図レポート 2026.3.16 Vol.900
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【今週のコンテンツ】
特集1
幸福に必要なのは地位やお金ではなくフローである
〜〜「フロー」の状態に入るとはどういうことか
特集2
昭和時代劇とは異なる、リアルな時代劇が盛りあがって来ている
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■ 特集1
幸福に必要なのは地位やお金ではなくフローである
〜〜「フロー」の状態に入るとはどういうことか
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読者の方から以下のようなご質問をいただきました。
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フロー状態に関する研究の第一人者であるチクセントミハイ氏は、フロー状態は、次の3つの条件が揃ったときに生まれると言っています。
1具体的な行動を必要とする、明確な目標があること
2行動した結果のフィードバックがすぐに得られ、うまくいったかどうか分かること
3自分のスキルレベルとその挑戦レベルが、高いレベルで釣り合っていること
私自身、この条件はかなり同意できるのですが、佐々木さんにとって、フローやゾーンと言われている集中状態に入っているとご自身が感じる時にはどのような条件が揃っていますか? もし、言語化できるのであれば教えていただけると幸いです。
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名前を挙げられているミハイ・チクセントミハイ(1934-2021)は、ハンガリー出身の心理学者で、スポーツなどで人が目の前のことに完全に没頭している心理状態を「フロー」と名付けたことで知られています。
フローに入ると、「自分は今スポーツをしているんだ」というような自己意識を感じなくなり、自分の置かれている状態を過度に意識することから解放されます。「自意識過剰」ということばがありますが、自意識が強くなりすぎると「失敗したらどうしよう」「他人からどう見られるだろう」という余計な不安が頭をよぎってしまう。フローに入ると、そういう不安から解き放たれて、自分のことなど考えずに無意識の世界に没頭できるのです。
フローに入れば時間についての感覚も変化し、時間の経過を感じなくなっていく。「夢中になって何かをしていたら、気がつくと何時間も経っていた」という経験は誰にもあると思いますが、これがまさにフローの時間感覚なのです。
フローに入る条件というのもチクセントミハイは分析していて、ご質問に書かれているように、明確な目標がすでにそこにあって、それを達成したらすぐにフィードバックの快感が得られること。このフィードバックは、例えば「この試合に勝ったら金メダルが得られる」「これを成し遂げたら賞金が手に入る」というような地位やお金ではありません。成功することそのものの快感です。フィギュアスケートだと「やった!トリプルアクセルについに成功した!」という一瞬の快感のようなものです。
そして自分の技能のレベルと、与えられている課題のレベルが釣り合っていることも必要です。課題があまりにも簡単すぎると、緊張感がなくてフローに入れません。逆に課題が難しすぎると、手も足も出ないのでフローに入ることができない。技能と課題のバランスが重要ということです。
そしてチクセントミハイは、質の良いフローの状態ができるだけ多く生成されることこそが、人間にとっての幸福なのであると喝破しています。たくさんのお金を手に入れ、社会的地位が高くなったとして、それは一時的な満足感は得られるかもしれませんが、決して持続する幸福にはならないのです。
以前、富裕層の取材をした際に「お金持ちになるというのは、冬の寒い時期に熱い風呂に入れるようなものだ」と説明してくれた企業経営者がいました。氷点下の寒い屋外を凍えながら歩いていると、なんとかホテルにたどり着いて暖かい部屋、熱い風呂に入りたいと願う。
そしてそれが実際に叶うと、「ああ、なんて気持ちいいんだ。至福のときだ」と感じる。でもその快感は長くは続きません。身体が慣れて暖かい状態が当たり前になってしまうと、もはや熱い風呂は快楽ではなくなってしまうのです。つまり熱い風呂は、持続する幸福にはなり得ない。