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第348号 ギターを持ったサンゴ礁/裏長屋のちぇるしー/孕鹿/2に追いかけられた日

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  • 2026/02/25
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「ギターを持ったサンゴ礁」 どこかのワガママおばさんの自己都合解散のせいで政治の話題が続き、取り上げるのが少し遅くなってしまいましたが、いつもチェキしてる「Science Portal」で2月5日、こんなニュースが報じられました。 【テーブル状サンゴが横須賀で生息、北限記録を30キロ更新 立教大などが調査】 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20260205_n01/ 詳細はリンク先の記事に書かれているのでこちらでは繰り返しませんが、本来は南の温かい海にしか生息していなかったテーブル状サンゴが、様々な原因によって少しずつ北上して来て、国内で最後に確認された北限の「千葉県館山市波佐間」よりも、さらに30キロほど北上した「神奈川県横須賀市佐島漁港」で確認されたというニュースです。 東京で生まれ育ったあたしの頭の中の地図では、東京の右上が千葉県で、左下が神奈川県なので、千葉から神奈川と言われると「南下」したようにイメージしちゃいます。でも、ちゃんと実際の地図を見ると、千葉県の館山市がある房総半島は東京のずっと下のほうに大きくグイッと回り込んでる一方で、神奈川県の横須賀市は東京の左下にチョコンとくっついてるので、南北の位置関係では横須賀市のほうが30キロも北になるわけです。 でも、いくら北限が更新されたと言っても、今回は30キロです。死ぬ気でがんばれば、あたしでも歩ける距離です。でも前回は、今回と時間的な差もありましたが、それまで和歌山県が北限とされてたテーブル状サンゴが、300キロも北の千葉県館山市で発見されたのです。たとえば、魚やタコやイカやエビやカニなどであれば、いつでも移動することができます。背中にギターさえ背負えば、小林旭さんのようにすぐに北へと旅立てます。 映画『南国土佐を後にして』で共演した小林旭さんと浅丘ルリ子さんが、次の映画『ギターを持った渡り鳥』では舞台を北海道の函館に変えて共演したのですから、まさしく熱帯の海洋生物の北上とリンクしています。でも、人間と違ってサンゴは海底の岩などに根を張っているので、おいそれとは移動できません。 ‥‥そんなわけで、サンゴは基本的に水温が25℃くらいの暖かい海に生息する動物で、クラゲやイソギンチャクの仲間です。日本では沖縄県がメッカとされていて、北は千葉県あたりまで生息しています。つまり、東北や北海道にはいないわけです。そんなサンゴは、これまでに確認されただけでも世界に800種以上もいるのですが、ナナナナナント!そのうちの半分に当たる約400種が沖縄の海で見られるのです! これだけたくさんのサンゴの中には、比較的低めの水温にも対応できる種類もいるわけで、そうしたサンゴが千葉県あたりまで生息域を広げていたわけです。でも、今回のテーブル状サンゴ「ミドリイシ」は、水温が20℃以下になると白化して死んでしまうのです。そのため、1年を通して海水温が20℃を下回ることがほとんどない沖縄県でたくさん見られるわけですし、長いこと生息域の北限は和歌山県だったのです。 で、そんな「ミドリイシ」が千葉県や神奈川県まで北上して来たということは、千葉県や神奈川県の海水温も20℃を下回らなくなってしまったのか?‥‥というと、そんなこたーありません。リンク先の記事にあるように、今回「ミドリイシ」の生息が確認された神奈川県横須賀市の佐島漁港の海水温は、昨年2025年のデータで「13.4~28.3℃」、冬はちゃんと冷たくなってるのです。 今回発見された「ミドリイシ」は直径が30センチ以上あるので、一般的な成長速度だと10年以上はこの場所にいたことになります。そうすると、海水温が20℃を遥かに下回る過酷な冬の時期を10回も超えて来たことになります。思わず「ヒュルリ~ヒュルリ~ララ~♪」と歌いたくなっちゃうほどの「越冬サンゴ」だったわけです! 「ミドリイシ」にも複数の種類があり、今回発見されたのは2種類だそうですが、計3つの個体はすべて白化しておらず、健康な状態だったそうです。これらの個体は水揚げされ、新江ノ島水族館とサンゴの専門家である立教大学の大久保奈弥教授の自宅の水槽で、元気に暮らしていると言います。大久保教授は「低水温に耐性のある個体」と見て研究を続けていますが、この個体だけが突然変異で耐性を持ったのか、それともこの種全体が生息域を広げるために進化したのかは、今後、解明されると思います。 ‥‥そんなわけで、南の海の海洋生物が北の海で見つかったと聞けばパブロフの犬のように「地球温暖化だ!」と言う人がいますが、何でもかんでも地球温暖化が原因だと短絡的に決めつけず、すべては複合的な原因によるものだと考えるのが妥当だと思います。もちろん、地球温暖化が加速度的に進んでいて、すでに「待ったなし」の状況であることは事実ですが、それだけが海洋生物の北上の原因ではないということです。 たとえば、日本列島の最も北にある北海道は、北側のオホーツク海は生態系が閉鎖的で冷たい海の生物に限定されますが、太平洋に面した東側と日本海に面した西側は、温帯から熱帯の海に生息する魚類が近海漁の網に掛かることが良くあります。日本海側は対馬暖流が南から北へ流れているため、これに乗って南の魚が北上することがあるのです。また、北から南へと親潮(千島海流)が流れている太平洋側も、南から北上して来た黒潮(日本海流)が大谷翔平の横のスライダーみたく親潮を回り込み、北海道の東側のけっこう近くまで到達しているのです。そのため、北海道の南部に位置する函館の近海では、日本海を北上して来た魚も太平洋を北上して来た魚も確認されているのです。 北海道大学水産学部の研究施設「臼尻水産実験所」がある函館市臼尻(うすじり)近海では、2023年、それまで北海道では見られなかった熱帯の魚類が14種も確認され、そのうち13種は北限の記録を更新しました。その13種とは、オキイワシ、ベンガルフエダイ、オジサン、ムレハタタテダイ、ミゾレチョウチョウウオ、オヤビッチャ、イソスズメダイ、テングハギ、テングハギモドキ、ツマリテングハギ、ウスバハギ、ソウシハギ、キヘリモンガラと、水槽で飼いたくなってしまうカラフルな熱帯魚が目白押しです。 この中で一般的にもメジャーなのは、沖縄や鹿児島で良く見られる「オジサン」で、アゴにヒゲがあるのが名前の由来です。お刺身でも美味しいし、煮ても焼いても揚げても美味しいのであたしは大好きですが、まさか北海道でオジサンが獲れただなんて「高市早苗が背中のファスナーを下げたら中から安倍晋三が出て来た」という四コマ漫画よりも驚きです。 ‥‥そんなわけで、魚はサンゴと違って移動できるので、たとえば渡り鳥のように、夏は北の海で過ごし、冬は南の海で過ごすということも可能だと思います。でも、これまでは見られなかった熱帯の魚が、こんなにたくさん次々と発見されるなんて、人類の知らないところで何かが大きく変わりつつあるのかもしれません。 あくまでもこれはあたしの‥‥というか、頭脳は子どもでもベッドでは女豹、迷探偵キッコナンの推理ですが、たとえば「このまま地球温暖化が進むと、近い将来、沖縄から鹿児島にかけての海域は生物が生息できないほど高い海水温になってしまう」というもの。そしたら、今、沖縄にいる魚たちはどうするでしょうか?もしもあたしが沖縄の海に住むオジサンだったら‥‥って、これウケる!(笑) ま、それは置いといて、もしもあたしが沖縄の海に住む熱帯魚だったら、今のうちから黒潮に乗ってチョコチョコと北海道まで通い、1年のうち一定期間を北の海で過ごし、低い海水温への耐性を付けておきます。そして、自分の子どもや孫にもそのDNAを伝達し、沖縄の海が沸騰する日に備えます。 そして、もしもあたしが沖縄の海のテーブル状サンゴ「ミドリイシ」だったら、魚みたいに自由に移動できないので、1年に1回の夏場の産卵のたびに、現在地より少しでも北に自分の子どもを根付かせて、その子どもが成長したら、さらに少しでも北に自分の子どもを根付かせて、それを延々と繰り返します。その結果が、今回の神奈川県横須賀市の佐島漁港で発見された「ミドリイシ」であり、つまりこれは「長い年月をかけて北海道まで移動している途中」だったという仮説です。 それなのに、嗚呼それなのに、それなのに‥‥、ここまで苦労して移動して来た「ミドリイシ」は、3つとも水揚げされて新江ノ島水族館と立教大学の大久保教授の自宅の水槽に入れられちゃったのです。でも考えてみたら、水族館の水槽やサンゴの専門家の自宅の水槽ほど安全な場所は、他にはないかもしれません。たとえ相模湾が巨大な海鮮鍋になるほど地球温暖化が進んでも、あたしはシレッと生き残っているのです。だから今回は「結果オーライ」という落語的なエンディングで、次のコーナーにバトンを渡したいと思います♪

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