「積極財政」とメンタルヘルス ― 財政と心の健康の知られざる深い関係

メンタルヘルス・精神医学から時流を読む
 財政政策とメンタルヘルスは、一見縁遠いテーマに見える。しかし両者の関係は、実のところきわめて緊密である。国家がどこにどれだけのお金を使うか。その判断は、精神科医療の質・量・アクセスを直接左右し、ひいては国民一人ひとりの心の健康に影響を及ぼす。  国際的なエビデンスを見渡すと、積極財政がメンタルヘルス政策に好影響をもたらした事例は少なくない。英国は2015年以降、政府の旗振りのもと「Five Year Forward View for Mental Health」に基づき精神科医療への投資を段階的に拡大し、初回精神病エピソードへの早期介入チームの普及や、プライマリ・ケアへの心理士配置(Improving Access to Psychological Therapies)を実現させた。 オーストラリアも連邦予算にメンタルヘルス向けの独立した財源を設け、自殺予防や早期介入のエビデンスベースのプログラムを全国展開してきた。財政が「先に投資する」ことで、後に発生する社会的コスト(労働損失、入院費、刑事司法コストなど)を圧縮できるというのは、公衆精神保健の鉄則である。

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  • 精神科医の西多昌規(にしだ まさき)です。メディアなどで話題となっている、あるいは世間の関心を集めている事件や出来事を、精神医学やメンタルヘルスから読み解き、独自の視点をもとに考察していきます。医療・健康問題だけでなく、政治経済や社会文化、芸能スポーツなども、取り上げていきます。*個人的な診察希望や医療相談は、受け付けておりません。
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