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佐々木俊尚の未来地図レポート 2026.1.19 Vol.892
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http://www.pressa.jp/
【今週のコンテンツ】
特集1
「恋愛は面倒だが結婚はしたい」という人が増えている理由
〜〜映画「消滅世界」から読み解く現代の恋愛と結婚
特集2
読者の方々からのいろんな質問に答えてみるシリーズ
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■ 特集1
「恋愛は面倒だが結婚はしたい」という人が増えている理由
〜〜映画「消滅世界」から読み解く現代の恋愛と結婚
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「コンビニ人間」で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの「消滅世界」という作品があります。出版社のキャッチコピーには、こう書かれています。「人工授精で、子供を産むことが常識となった世界。夫婦間の性行為は『近親相姦』とタブー視され、やがて世界から『セックス』も『家族』も消えていく……日本の未来を予言する芥川賞作家の圧倒的衝撃作」
★消滅世界(河出書房新社) Kindle版
https://amzn.to/4qOaRNo
この作品が映画化され、昨年末に公開されています。
★映画「消滅世界」
https://shoumetsu-sekai.com/
わたしはこの作品を試写で拝見し、川村誠監督とも上映館のアフタートークでお話しさせていただきました。価値観が反転した世界はどのようなものかをリアリティたっぷりに描いていて、非常に挑戦的で刺激的な傑作だったと感じています。なお主演の蒔田彩珠さんの演技も、日常性にかいま見える狂気のようなものがあり、非常に素晴らしかったです。
「消滅世界」では、出産は人工授精に寄ることが当たり前になり、結果として夫婦間の性行為が(出産のためには)不要になり、それが転じて夫婦間の性行為がタブーになってしまった世界を描いています。いっぽうで性行為そのものが否定されているわけではなく、家庭外で恋人をつくり性行為をすることが自由化されているのです。
だいぶ昔の話ですが、イケメンとして有名な男性タレントが不倫疑惑を指摘されて「セックスは家庭に持ち込まない」という名言(迷言?)を語ったことがありましたが、まさにそういう価値観が実現している世界を描いているのです。それは2020年代の現在からみると実に倒錯しているように感じますが、性をめぐる価値観は決して時代を超えて一貫しているわけではありません。原作では、夫婦間の性行為を肯定し家庭外セックスに批判的な「古い価値観」の母親に、主人公がこう告げるシーンがあります。
「原始時代、人間は、多夫多妻制の乱婚制度が当たり前だったんだって。セックスは儀式で、儀式の日に若者が集まって集団で乱交して子供を孕んだんだって、何かで読んだわ。でも、それを今やってる人がいたらその人は狂人でしょう? お母さんのやってることはそれと同じ。時代は変化してるの。正常も変化してるの。昔の正常を引きずることは、発狂なのよ」
シェアハウスが急速に盛りあがって、新たなコミュニティの文化として注目されるようになったのはもう10年以上も前になりますが、そのころにわたしはシェアハウスに居住している20代の女性とトークセッションをしたことがあります。
彼女は当時結婚しておらず、とりあえず結婚する予定もないと話し、「結婚する理由ってこどもが欲しいか、経済的なセーフティネットか、家事の分担か、そして精神的な安定か。その四つぐらいだと思うのです。わたしはこどもは今のところ求めておらず、それ以外の三つの理由はシェアハウスの仲間たちとの関係で満たされちゃうんですよね」
この論には、実に説得力があると感じました。実際、彼女に限らず30代ぐらいの女性から「結婚はしたいが恋愛は面倒くさい」「今すぐポンッって目の前に夫が現れればいいのに」といった趣旨の話を聞くことは少なくありません。原作からさらに引用しましょう。
「恋愛なんて下半身の娯楽だって、聞いたことがあるよ。確かにそうだよな。やっぱり人生で一番大切なのは、家族だよ」 「そうだよ。当たり前だよ」 「家族のことを考えてると安心するよね。自分にはそれがあるんだって思うと、外で多少のことがあっても平気だなあ」 「僕たちにはいずれ子供もできるしね。楽しみだな、そうしたら家族が忙しくなって、恋愛なんかで時間つぶししている暇はなくなるよね」