「人間力を高めれば成功できる」「生き残るには人間力が必要」などの言葉より、無責任で危険なものはありません。ロジカルシンキング・コミュ力・自己管理能力などの要素は、たしかにゼロよりはあったほうがよいでしょう。
しかし、人間力とは「知識・スキルだけでは測れない人としての総合力」であり、極めて曖昧な精神論の一種です。僕たち弱者が平穏に生き残り続けるためには、人間力をはじめとする精神論より具体的な戦略が求められます。
今回のメルマガでは、「人間力」という言葉に隠された欺瞞を解き明かし、精神論が組織を蝕む構造をまとめました。また、精神論が声高に叫ばれる状況において、どのように対処するのが賢明なのかについても解説します。
ほかにも、「イライラや怒りを文章で『伝えない』方法」や「AIの出力をそのまま使わないで!」なども執筆しました。ビジネスの現場において賢く立ち回る方法を今号で把握し、ほんの少し活用すれば生きやすくなるかもしれませんよ。
## 精神論を叫ぶ人や組織とは距離をとろう|弱者が生き残るための戦略論・思想
昨今、いろいろなところで重要だとされる人間力ですが、本質的には単なる精神論の一種でしかありません。精神論が声高に叫ばれるとき、多くの場合は失敗や責任転嫁のサインだと認識しておく必要があります。
そもそも人間力とは、自己管理・主体性・協調性などを含む総合的な自活力やビジネス力を指すようです。ただし、人間力の定義は極めて抽象的であり、客観的な測定や評価が難しいという問題を抱えています。
もちろん、自分の能力への確信が高まれば挑戦しやすくなるでしょうし、信頼関係が調整コストを減らすのも事実です。しかし、抽象的すぎる概念・精神論・理想論の盲信は、現実無視や思考停止に直結しかねないのです。
たとえば、ある企業の赤字体質を、経営者が「人間力不足」という言葉で片付けてしまったらどうでしょう?抽象的な概念で原因を説明するのは、失敗の責任を個人や部下に押し付ける有力な方法のひとつです。
残念ながら、日本の政策・企業・民間の言論に至るまでいまだに「人間力をあげよう」というスローガンが掲げられています。戦略や制度よりも精神論を重視する傾向は、旧日本軍の「必勝信念」とまったく同じ構造となります。
つまり、トップは過去を総括して改善を目指す具体的な戦略を描けず、現場は自己犠牲的に動くものの疲弊するだけです。
また、「上層部が責任を回避」「測定不能なスローガンで失敗を有耶無耶に」というのが精神論が振り回される典型的な状況です。詐欺的な商法や自己啓発ビジネスでも、「あなたの人間力が足りない」と搾取の口実として利用されます。
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