2025年 第37号
【長尾和宏の痛くない死に方】
長尾和宏です。ようやく暑さはひと段落。秋らしくなってきました。
今年は、僕の大好物のサンマが安いようでうれしいです。サンマの塩焼きを食べると、ああ、秋が来たなという気がします。
焼き網にのせてじゅうじゅうと音を立て、香ばしい香りが漂ってくると、誰しも食欲をそそられます。かつては秋になるとどこの家庭でも当たり前のようにサンマが食卓に並びましたが、近年は漁獲量が激減し「高級魚」と呼ばれるほど値段が高騰しました。しかし、今年(2025年)は状況が変わりつつあります。市場に出回るサンマが比較的豊富で、価格も例年より安くなっているのです。
なぜ今年はサンマが安いのか?
サンマ価格の背景には、海の環境変化と国際的な漁業事情があります。ここ数年、温暖化や海流の影響でサンマの回遊ルートが変化し、日本近海に来る数が激減しました。そのため、中国や台湾などの外国船による公海での大量漁獲と重なり、日本漁船は不漁続きでした。中国人が、サンマの旨さに気づいてしまったらしい……ここ数年は、スーパーの店頭では一尾500円を超えることも珍しくありませんでした。
ところが今年は、北太平洋の海水温がやや下がったこと、国際的な漁獲規制が進んだこともあって、日本の沿岸にサンマが戻ってきました。その結果、漁獲量が持ち直し、価格も安定。消費者にとっては久しぶりに「庶民の魚」として味わえる秋になったのです。サンマは高齢者の強い味方?
サンマは、ただ「おいしい」だけではなく、高齢者にとって必要な栄養がぎっしり詰まっています。
〇DHA・EPA(不飽和脂肪酸)
脳を活性化し、記憶力の維持に役立つDHA、血液をサラサラにして心筋梗塞や脳梗塞を防ぐEPA。サンマは青魚の代表格として、これらを豊富に含んでいます。認知症予防や動脈硬化対策に最適です。
〇ビタミンB群
サンマにはビタミンB12が多く含まれ、貧血予防に効果的。さらに、疲労回復に役立つナイアシンも豊富です。
〇カルシウムとビタミンD
骨粗しょう症が心配な世代にとって、カルシウムとその吸収を助けるビタミンDは大切。サンマの骨を佃煮や煮付けにすれば、無駄なく摂れます。
〇タンパク質
加齢とともに筋肉量が減りやすくなりますが、サンマは良質なタンパク源。焼き魚としてはもちろん、つみれや煮魚にしても食べやすいため、高齢者に向いています。
「秋刀魚が出ると按摩(あんま)が引っ込む」ということわざがあります。
さんま、と あんま、を語呂合わせで引っかけているわけですが、秋刀魚が出回る秋は、気候もよく食欲も出て健康になり、按摩にかかる人がなくなるということ。
今こそ、日本の味覚を堪能し、散歩に出かけて、来る次のパンデミックに負けない身体づくりを心掛けたいものです。
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さて一昨日は、三重県四日市で〈第48回日本在宅ホスピス協会〉の全国大会の講演とシンポジストをさせて頂きました。懐かしい顔にたくさん出会えて、元気が出ました。また、僕の講演を聴くために、わざわざ遠くから四日市まで来てくださった方も多くいて厚く御礼を申し上げます。今年のテーマは、「新時代の看取り文化の構築」というとても難しいものでした。新時代の看取り、とはすなわち、少子高齢化時代の看取り、ということにほかなりません。どうやって地域で高齢者を最期まで診るか……このテーマを投げかけた、石賀丈士先生は、現在、「在宅看取り日本一」で、『ガイアの夜明け』でも特集された注目の若手。
全国から視察者が絶えない、「四日市モデル」の仕掛け人でもあります。
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