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分割圧力を一旦回避したグーグル/【メルマガ読者限定】サントリーの新浪氏辞任について 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.123】

グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.123】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【今週号の目次】 1. 今週の一言 ※ 最近の話題から一つピックアップして短く論評するコーナーです。  ◆ 分割圧力を一旦回避したグーグル 2. 今週のメインコラム ※ 一つのテーマについて深堀りするコーナーです。一回で書き切れないテーマは連載でお届けします。  ◆ 【メルマガ読者限定】サントリーの新浪氏辞任について 3. 今週のオススメ! ※ 本、映画、食べ物、ガジェットなど、読者にお勧めしたいものをお伝えするコーナーです。こちらは、何かお勧めしたいものがあるときのみの掲載になります(辻野が個人的に気に入ったものを勧めるだけで、広告宣伝ではありません)。  ◆ アフリカ人のトレーニング動画 4. 読者の質問に答えます! 5. スタッフ“イギー”のつぶやき 【お詫びと訂正】 前号の「今週のメインコラム」で、吉田松陰の『幽囚録』を引用したくだりに文字化けがありました。これは、まぐまぐ社のエディタでは変換できない古い漢字が含まれていたためです。該当部分は以下の二か所です。 「今急武備を修め、艦略具はり ?略 足らば、則ち宜しく蝦夷を開拓して諸侯を封建し、間に乗じて加摸察加(カムチャッカ)・ ?都加 (オホーツク)を奪ひ、(後略)」 ?略は、「とう略」で、敢えて常用漢字を当てはめると「砲略」となり、海軍力や砲兵力のことです。 ?都加は、「オホーツク」に対する漢字の当て字で、敢えて常用漢字を当てはめると「奥都加」となります。 まぐまぐ社によると、今後も対応は難しいとのことですので、文字化けを見落とした場合にはどうかご容赦ください。 ───────────── 1. 今週の一言 ───────────── ◆ 分割圧力を一旦回避したグーグル 2020年、米司法省がグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴し、昨年8月に違反を認める一審判決を米連邦地裁が出したことについて、 以前に本メルマガでも取り上げました が、その続報です。 その後、事業分割を含めた是正措置に関する審議が続いていましたが、9月2日、連邦地裁は、グーグルは検索データの一部を競合他社と共有する必要があるものの、ブラウザーのクロームや、OSのアンドロイドを売却する必要はないという判断を示しました。これにより、グーグルは米司法省が求めていた最も厳しい是正措置を一旦回避できたことになります。 この判断を受けて、アルファベットの株価は急伸して史上最高値を更新し、9月3日の終値は230ドルを超えました。これは株主としても嬉しい動きです。 連邦地裁の裁判長は、「生成AIの出現がこの裁判の方向性を変えた」と述べていますが、グーグルも声明で「AIによって検索市場が変化していることが認知された」と評価しています。一方で、「検索市場の独占に関する昨年の認定には依然として異議がある」との立場は崩しておらず、今回命じられたデータの共有義務についても懸念を表明しています。しかしながら、ひとまず分割の危機を回避できたこともあって強い反発を示すことはなく、データの外部共有の影響については今後精査するとしています。 さらに連邦地裁は、グーグルが、検索、クローム、ジェミニ(グーグルの生成AI)といった同社の各サービスを抱き合わせて顧客企業や消費者を縛る契約を禁止していますが、これに対して、原告の米司法省は、追加の是正策を求める可能性を示唆しながらも、「グーグルが検索独占のために用いた戦術を生成AI製品にも用いることを阻止せねばならないことを裁判所が理解した」と評価するコメントをしています。 なお、クローム売却という是正措置が検討されていることを受け、米AI新興企業のパープレキシティが、345億ドル(約5兆円)でのクローム買収に名乗りを上げていました。もちろん、パープレキシティにそれだけの買収資金があるわけではありませんから、彼らの買収提案がどこまで本気だったかについてはさまざまな見方が出ていました。 しかし、生成AIの登場により、パープレキシティ、オープンAI、マイクロソフトなどは生成AIを使った検索サービスを開始していて、グーグル検索の市場を脅かしています。もちろん、グーグルもジェミニを検索エンジンに統合していますが、これによってユーザーが検索結果のサイトに行く機会が減って広告収入の減少を招き、自らの首を絞めることにもなっています。さらに、データの外部共有を義務付ける今回の決定は、AI検索を手掛ける競合他社に有利に働くことになります。 そのような意味では、今回の司法判断は、AI検索でグーグルと競合できる企業を育てることを重視して独占の是正を図ろうとしているものともいえ、「グーグル分割」というような強制介入よりもフェアな判断だと思います。 グーグルにとっては、当面、--

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  • グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中
  • フェイクやノイズが渦巻くこの時代。何を信じ、どう行動するかが、人生を大きく左右します。 ソニーで数々のヒット商品を手がけ、Google日本法人社長として同社を日本に根付かせる。そして50代で起業。 現場から経営、国内外のテック最前線までを熟知する筆者が、政治・経済・テクノロジー・人生哲学を縦横無尽に語り、「ぶれない思考軸」と「変化を楽しむ視点」を、毎週あなたに届けます。
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