池田清彦のやせ我慢日記
/ 2025年8月8日発行 /Vol.293
INDEX
【1】やせ我慢日記~日本の国力を回復させる方途について~
【2】生物学もの知り帖~地下水から見つかった新属新種のゲンゴロウ~
【3】Q&A
【4】お知らせ
『日本の国力を回復させる方途について』
前回はこの30年で日本の国力が国際水準から見て激しく衰退してきたことを述べた。今回はこの衰退した国力を立て直す方途について述べる。大方の地震学者の言を信じれば、南海トラフ地震まであと10年くらいしかない。昔日の勢いを取り戻すことは無理としても、少しでも国力を取り戻さないと、大震災後の未来は悲惨なことになる。
国力というのは曖昧なコトバだけれども、その時の経済力、生産力、科学技術力、国民の知力と創造力、文化発信力、資源力、軍事力等の総体である。このうち、国民の生活にとって特に重要なのは、経済力、生産力、科学技術力である。これらが上昇すれば、景気が良くなり、国民の生活水準が上昇して、購買力が上がる。
逆に購買力が上がれば、景気が良くなり、生産力や経済力も上がり、科学技術や教育に投資する余裕もできて、イノベーションを起こす若者も出てくるだろう。大震災の後で速やかに復旧するには、潜在生産力や科学技術力の高さがぜひ必要なのだ。
そうなると、まず国民の購買力を上げる方途を考える必要がある。購買力が下がった原因はわかっている。それは消費税の導入である。3%の消費税が導入されたのは1989年4月1日で、日本はバブルの絶頂期であった。既にこのメルマガでも述べたことがあると思うが、この年の世界の株価総額ランキングで、上位50社のうち32社が日本の会社だった。2025年には、それがどうなったかというと、辛うじてトヨタが入っているかどうかギリギリのところである。
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