■ネット炎上の今
近年のネット炎上事例を振り返ると、これまでとだいぶ変わった点
と何も変わってない点が混在している。炎上件数自体は増加の一途
から一転、減少している。
興味深いデータとしては、2024年の炎上の発生件数は、大幅に減
少した。基本的に右肩上がりで推移してきたが、新型コロナウイル
ス禍で在宅時間が長くなったことを受けて一段と増加していた。
それが2021年をピークに頭打ちになり、24年大幅に減少したの
だ。たしかに減ったと感じる人も多いはずだ。発生数の減少は、企
業にとっても、個人にとっても朗報だ。
だが、炎上件数の減少が、炎上リスクの軽減には残念ながらつなが
っていない。特に内訳を見ると、減少したのは個人の炎上で、企業
の炎上については横ばいだ。
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炎上の理由として挙げられるのが、Xの仕様変更だ。炎上拡散装置
であるXでは、投稿のインプレッション数に応じて広告収入が配分
されるようになり広告目的のアカウントが乱立した。
さらに、おすすめ欄に表示されるアルゴリズム変更で、フォロワー
が100にも満たない一般人の小規模アカウントの投稿でも、おす
すめ欄に表示されるようになった。
場合によっては、数千万単位のインプレッション数を導き出せるよ
うにもなった。誰もが発信できる時代の到来だ。炎上件数は減少し
ても、炎上1件あたりの規模、インパクトは増しているのだ。
炎上の流出経路も変わってきた。かつて、炎上の火種はミドルメデ
ィアが記事として取り上げることで世に知られた。その後インフル
エンサーが力を持ち、彼らへのタレコミが効果を持った。
今は、インパクトのあるネタなら、弱小アカウントでも投稿1発で
拡散することがある。企業アカウントの運用者にとってはいつ何
時、個人のXが突撃してくるかわからないシビアな事態になった。
★
炎上が起こりやすくなった要因として、もう一つ重要な点がある。
社会の分断が一段と加速した点だ。政治的スタンスは、保守寄りか
リベラル寄りかなどであれば、どこかに妥協点はあるものだ。
だが、現代の分断はどこまで行っても妥協しそうにもない分断だ。
国のあり方にひとつとっても、積極財政派と緊縮財政派の分断な
どは一致点が見だせない。
他国に手本を求めようにも、米国社会が分断の最たる国になってし
まった。様々な論点で相容れないもの同士が共存している状態は、
着火しやすい、可燃性の高い環境だ。
★
もう一つ、国内でもこの10年でコンプライアンス遵守ならびに多
様性、公平性、包摂性の意識がだいぶ進展・浸透してきた。たとえ
ば、性的な広告はほとんど見られなくなった。
だが、変化が起きている時は「まだ遅れている」と旗を振る人と、
「昔は良かった」と懐古する人の間に大きな分断が生じる。松本人
志騒動からフジテレビ騒動まで、溝が埋まる気配はまったくない。
そんな中、米国はトランプ政権に移行してからは「反DE&I」に
転じた。様々な価値観がぶつかる混沌時代を迎えたのだ。企業のS
NS担当者は、そんな環境下で発信を続ける必要があるのだ。
★
最後に、変わらないこととして、炎上の引き金になるのは、いつも
喜怒哀楽の「怒」の感情であるということだ。人気のSNSや投稿
端末、情報モラルは時代によって変化する。
だが、何をされると「カチン」と来るのか、すなわち、怒りの感情
をもたらすものは、ほとんど変わらない。だから、10年前同じパ
ターンの炎上が繰り返されているのだ。
企業の担当者はもちろん、一般のSNSユーザーも、炎上が頻発す
る中で、利用しながらも一抹の不安があるはずだ。対処法を学ぶに
は、頻出パターンとして、事例から学ぶべきなのだ。
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