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フェンタニル問題への精神医学的アプローチ

メンタルヘルス・精神医学から時流を読む
 名古屋港を経由してアメリカへフェンタニルが密輸されていた事件が発覚し、大きな注目を集めた。この事件は、日本が意図せず国際的な薬物密輸のハブとして利用されていた実態を明らかにした。中国で製造されたフェンタニルの原料や完成品が、日本の港湾を通じてアメリカに運ばれていたのである。不思議なのは、この件に関してはメディア報道も少ないことだ。陰謀論者でなくても、なんらかも圧力や忖度があるのではと疑ってしまう。  日本は従来、薬物に対する厳格な法規制により、国内での薬物乱用が他国と比較して少ないとされてきた。しかし、グローバル化が進む現代において、我が国も薬物流通網の一部として組み込まれている現実を直視する必要がある。特にフェンタニルのような強力な合成薬物は、少量でも致命的な効果をもたらすため、その取り扱いには細心の注意が必要だ。  フェンタニルによって深刻な被害に遭っているのは、アメリカ合衆国だ。アメリカでは現在、フェンタニルによる薬物危機が前例のない規模で拡大している。米国疾病予防管理センター(CDC)の統計によると、薬物過剰摂取による死亡者数は年間約10万人に達し、そのうち約7割がフェンタニルを含む合成オピオイドによるものである。この数字は、交通事故死や銃による死亡数を大きく上回る深刻さを示している。

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  • 精神科医の西多昌規(にしだ まさき)です。メディアなどで話題となっている、あるいは世間の関心を集めている事件や出来事を、精神医学やメンタルヘルスから読み解き、独自の視点をもとに考察していきます。医療・健康問題だけでなく、政治経済や社会文化、芸能スポーツなども、取り上げていきます。*個人的な診察希望や医療相談は、受け付けておりません。
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