2025年 第24号
【長尾和宏の痛くない死に方】
長尾和宏です。まだ6月だというのに異常な暑さです。在宅医を卒業してこの6月で2年になりますが、夏場は、独居の高齢患者さんが冷房をつけて寝ているかと、いつも気が気ではありませんでした。
熱中症は、気温や湿度が高い中で、体温がうまく調整できなくなり、体の中に熱がこもってしまうことで起こります。熱中症の死者は、1995年の調査から、年々増え続けていて、2024年度の熱中症の死者数は、2152人。
65歳以上の高齢者が、熱中症による死亡の8割以上を占めています。
異常な猛暑だった、昨年、2024年。僕はちょうど、映画「桐島です」の撮影で、ほんとうに毎日フラフラだった…そんな昨年の熱中症の死者数は 2,152人 と報告されています。
今年は6月からこの暑さ。もっと死者が上回る可能性が高い。
それにしても、昼間、活発に外に出ていないはずの高齢者の熱中症死がなぜこんなにも多いのだろうか? 以下、分析してみよう。
■ なぜ熱中症は高齢者に多い?
〇高齢になると、暑さを感じにくくなる
⇒体の温度センサーが鈍くなり、暑くても「まだ大丈夫」と思ってしまう。
〇高齢になると、喉の渇きを感じにくくなる
⇒脱水していても、水を飲まなくなりがち。
-〇高齢になると、汗をかきにくくなる
⇒体温調節の仕組みが弱まって、熱が体内にこもる。
〇持病の影響や薬の副作用
⇒高血圧や糖尿病、利尿薬などが、脱水を悪化させることがある。
加えて、高齢者の中には「冷房をつけるのがもったいない」「昔はクーラーなんてなかった」と、暑さに耐えてしまう方も少なくありません。僕の世代でも、ときどきそういう人がいる。学生時代、運動部に所属していると、暑さは気力で凌ぐものだと叩き込まれる。
しかし、僕が学生であった1980年頃、夏季(6~8月)の平均最高気温は 約29.5 度。で、最高気温が30度を超える「真夏日」は、年間約40日程度でした 。しかし、2020年代になり、東京・大阪などの夏は平均最高気温が 34 ℃前後、熱中症指数の危険領域に達することも多く、猛暑日は増加傾向にあります 。40年あまりで平均気温が5度も上昇。もはや、日本の夏は、僕らが知っている夏ではない。
■熱中症は、どこで起きるのか?
熱中症というと、屋外の炎天下でなるもの、というイメージがあるかもしれませんが、実際にはその4割近くが「自宅の中」で発生しています。
特に高齢者において注意したいのが:
〇 風通しの悪い部屋で過ごす
〇 扇風機だけでしのいでいる
〇 夜間、寝ている間の脱水
の3点です。「家の中にいるから大丈夫」という油断が、かえって危険につながることもあるのです。
■熱中症の主な症状とは?
多くの高齢者の熱中症を見てきた経験からいえば、初期症状を見逃さないことが命を守るカギです。以下のような変化に気づいたら、すぐに対処しましょう。
【軽度の熱中症】
〇 めまい、立ちくらみ 〇筋肉のけいれん(足がつるなど) 〇だるさ、ボーッとする
【中度の熱中症】
〇 頭痛、吐き気がする 〇 家の中にいるのに、大量の汗をかく 〇 体温が高い 〇 意識がはっきりしない
【重度の熱中症】
〇 意識がもうろう 〇呼びかけに答えない 〇体温が40度以上
〇大量にかいていて汗が止まり、皮膚が乾いて赤みを帯びてくる
……このような状態になったら、すぐに救急車を呼んでください。判断が遅れると、命を落とす危険もあります。
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