「ナップスター」の意味
グーテンベルグが印刷術を発明したことによって、それまで口示によって伝えられていたものが活字印刷に敗き換えられた。
口承を生業にしていた人もいたのだろうが、そうした業務を否定した。しかし、そんなことよりも、もっと本質的な変化を生み出した。それはそれまで、特別な権力を持ったもの以外にはできなかった「歴史への表現」という行為が、広く開放れたということである。そのことによって、近代文学が生まれ、さまざまな近代的個人が、多様な表現活動を追求した。ハードの革命がソフトの多様性を保証したのである。
インターネットの世界で「ナップスター」というシステム話題になっている。
これは、個々のパソコンにあるデータを公開して、すべての人が自由に使いあえる、というものである。音楽や映像のデータ開放からはじまったので、旧来型の表現者たちは、著作権の保護という観点から否定のキャンペーンをはっている 。
それは、あたかも、グーテンベルグの時代における口承伝達の人たちからの声に聞こえる。問題なのは、権利ではない。インターネットという、ゲーテンベルグの革命に匹敵する新しい時代の中で、近代文学に匹敵する「新しい表現活動」がどのように成長していくか、だ。同時に、近代的個人に匹敵する、インターネット時代における、新しいアイデンティティをどう生み出していくか、だ。
旧来型の表現者は、「こんなシステムが普及したら、も音楽なんか作らなくなる」という言い方をした。そうではない。「こんなシステムが普及したら、もう、金もうけのために音楽を作る連中は音楽を作らなくなる」ということだろう。音楽というものが、コマーシャリズムから次の段階に変容していくのである。
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