第356号(2025年3月7日号)
『最後の調停官 島田久仁彦の無敵の交渉・コミュニケーション術』
はじめに:
いつもメルマガ
『最後の調停官 島田久仁彦の無敵の交渉・コミュニケーション術』
をお読みいただきありがとうございます。
さて、今週号の内容ですが、まず【1】の
『無敵の交渉・コミュニケーション術』のコーナーでは、
引き続き
【ビジネスにも活かせる外交交渉からの教訓】
についてお話しいたします。
今週号では、
【異文化コミュニケーション‐通訳・翻訳と交渉の使い方】についてお話しいたします。
その内容は本編をお楽しみに♪
次に【2―国際情勢の裏側】ですが、
今週もいろいろなことが起きました。
一つ目は、メディアを賑わさせている【トランプ大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談での“決裂”】についてです。
『なぜ冒頭から40分もメディアに公開で首脳会談を行ったのか?』
『なぜ公開の時点で、Vance副大統領に発言させたのか?』
『どうしてゼレンスキー大統領は通訳を用意しなかったのか?』
『あの衝突は、本当に意図せずに起きた偶発的な事態だったのか?』
『トランプ・ヴァンス組の交渉戦略に見事にはまったのか?』
いろいろな疑問が湧いてくるのですが、真相は闇の中です。
ただ、すでに対ウクライナ支援の一時停止がトランプ大統領から発表されたこともあり、
事態は決して好ましい方向には進んでいないと思われます。
それでもまだ“合意近し”という報道が流れてきたりもしますが、真偽のほどは定かでないと考えています。
二つ目は【ガザを巡る各国の駆け引き】についてです。
2月4日のトランプ大統領による『ガザ所有と再開発』発言は、その是非はともかく、
確実にアラブ諸国の目を覚ましたきっかけになりました。
もちろんイスラエルとハマスの間の仲介を担ったカタールとエジプトという例外はあるものの、
人道支援の実施に直接かかわるエジプトを除いては、ガザ地区の復興に対してあまり積極的な働きかけはなかったと考えられます。
それが2月のトランプ発言とそれに対して前向きなネタニエフ発言を受け、増長するアメリカとイスラエルの影響力を懸念し、
アラブ諸国が重い腰を上げ、今週に入って戦後のガザ統治について“アラブ案”を提案しています。
ただ肝心の“停戦の継続”が危ぶまれており、現在第1段階がまだ完了せず、
恒久的な停戦と復興について交渉する第2段階に向けた協議が空中分解手前という分析が出ており、ガザを巡る情勢は予断を許さない状況が続いています。
そんな中、アメリカ東部標準時3月5日夜にSNS経由でトランプ大統領がポストした内容は
『人質を全員即時解放するとともに遺体の返還を直ちに行え。さもなければ、ハマスは壊滅するだろうし、アメリカはイスラエルにそのためのフリーハンド(軍事・外交面であらゆる支援)を提供する。』
という“ハマスに対する最後通牒”と捉えられて大きなショックが広がっています。
このポストを受け、様々な停戦に向けての協議がすべて停止され、
有事に向けた対応のための協議に入れ替えになりました。
決して良い方向には進まないと考え、alert levelを引き上げました。
三つ目は【瀬戸際に立っている核兵器廃絶・核軍縮の機運】です。
今週はTPNWの会合にお邪魔していますが、その内外で核軍縮への機運が萎みつつあるとの見解を多く耳にします。
私自身、ロシアによるウクライナ侵攻以降、その傾向を痛いほど感じ、
また中国や北朝鮮の核軍拡、中東における不穏な動きなど、
いろいろな案件が舞い込んできています。
またトランプ政権になってから、トランプ大統領は核兵器の新造については否定的な発言があるものの、
あくまでもロシアと中国に対する外交的な働きかけに過ぎないとの分析もあり、
『核兵器こそアメリカの力の象徴』と主張する高官もいる中、あまり先行きの明るい話ではないと感じています。
そしてウクライナを巡るアメリカのロシア寄りとも取られかねない発言と姿勢は、
予てより欧州独自の安全保障システムの構築を提唱してきたフランスのマクロン大統領に
『ロシアは欧州にとっての直接的な安全保障の脅威であり、フランスが欧州全域に核の傘を提供する用意がある』
という発言をさせ、現在、ニューヨークに集う欧州各国の核軍縮の担当者を混乱させています。
(この背後にはドイツの次期首相になるメルツ氏からの要請があったと言われています。)
また、来月末に開催されるNPT(核兵器不拡散条約)も交渉が長い間行き詰っており、
核保有国が国連安全保障理事会の常任理事国というP5プロセスという交渉プロセスも、
核保有国であるロシアがウクライナに侵攻し、中国は核戦力の透明性を高める動きには悉く反対することから、
核保有国同士の対話のプロセスが成立しない状況になってきています。
縁あってその対話プロセスにオブザーバー参加させてもらってきましたが、最近はその対話も開催されていないのが実情です。
また核保有国が批准しておらず、核の傘諸国も対応が分かれているTPNWも、
核兵器禁止(開発もテストも、もちろん使用も禁止)を謳うものの、
軍縮の議論から禁止の議論までにいたるプロセスについての具体像がごっそりと抜け落ちており、建設的な議論が進まないとの印象を受けています。
『核兵器なき世界づくり』を謳ったP5プロセスと、一昨年のG7広島サミットの首脳宣言は、
コンセプトとして広く受け入れられているものの、実情はかなり厳しく、危険な状況・デリケートな安定が続いていると考え、強い懸念を抱いています。
今週号の【2-国際情勢の裏側】では、
【突破口が閉じそうな紛争調停の機運‐ウクライナとガザ、中東を巡る“薄氷を履むが如し”の交渉】
と題してお話しします
今回のメルマガも長くなりましたが、どうぞ最後までお付き合いくださいね。
それでは今週号、スタートします★
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