第354号(2025年2月21日号)
『最後の調停官 島田久仁彦の無敵の交渉・コミュニケーション術』
はじめに:
いつもメルマガ
『最後の調停官 島田久仁彦の無敵の交渉・コミュニケーション術』
をお読みいただきありがとうございます。
さて、今週号の内容ですが、まず【1】の
『無敵の交渉・コミュニケーション術』のコーナーでは、
引き続き
【ビジネスにも活かせる外交交渉からの教訓】
についてお話しいたします。
今週号では【チームワークの功罪(Pros & Cons of the Teamwork)】についてお話しいたします。
その内容は本編をお楽しみに♪
次に【2―国際情勢の裏側】ですが、
今週もいろいろなことが起きました。
はい、また今週もまさにトランプ劇場と言える週になりましたが、
就任から1か月になる今週は、ちょっと主役の存在が・・・。
一つ目は【米ロ2国間でスタートしたウクライナ戦争の停戦協議】についてです。
2月12日にトランプ大統領とプーチン大統領の“初の”電話会談。
14日にはミュンヘン安全保障会議の場で、初のアメリカとロシアの高官協議。
そして18日はサウジアラビア王国の首都リヤドで米ロ外相会談ともいえる停戦協議がスタートしました。
ただ懸念していた通り、当事者であるウクライナはこの場から疎外され、
ロシアによる脅威を直に受けるEUも蚊帳の外に置かれ、本当に米ロ2か国間での協議プロセスとなりました。
本当にウクライナはプロセスから疎外されるという由々しき事態になったのでしょうか?
それともウクライナが、何らかの思惑をもって、停戦協議のプロセスから自らを疎外したのでしょうか?
諸々の分析については、【2】のコーナーでお話ししたいと思いますが、一つ言えることは
『ロシアの思惑通りの状態になっている』ということです。
いろいろと今後、波乱含みの事態が予想されますが、果たして『すべての関係者がそれなりに譲歩したうえで、
受け入れ可能な停戦合意』が成り立つことはあるのでしょうか?
トランプ政権内の意思統一が成されていないと見受けられる中、すでに協議の行き先は暗礁に乗り上げているように見えてきます。
二つ目は【ロシアのアフリカ大陸への影響拡大と欧州への脅威の拡大】についてです。
アサド政権が倒れ、ロシアが旧ワグネルの手を借りて、アフリカへの足掛かり・拠点として確保していた
シリアの海軍基地(港)と空港の継続使用の可能性が無くなってきている今、
新たな足掛かりとしてスーダンとリビアでの軍事的な展開が顕著になってきています。
どちらも軍事的な支援の見返りとして獲得するものと言われていますが、
これでアフリカにおいて米欧に対抗し、欧州とアジアとを結ぶ物流の1割強が通過する
紅海を握って、欧州各国に圧力をかけるだけでなく、
地中海へのロシア海軍潜水艦の配備・展開の可能性も広がり、
欧州南部はロシアの巡航ミサイルの射程圏に入るといわれているため、
NATOに対して大きな軍事的なプレッシャーをかけることになります。
ウクライナやロシアと国境を接する国々へのNATOの拡大に対する牽制として用いられるだけでなく、
物流の要衝を押さえることで、深まる物流危機にさらなるプレッシャーをかけることに繋がり、
それがまたロシアの国際社会での影響力の再興に繋がる事態が予見できます。
三つ目は【イスラエルの暴走とアラブを目覚めさせ、引きずり込んだトランプの作戦】です。
『アメリカがガザを所有し、再開発する』
『ガザ地区に住むパレスチナ人は恒久的に隣国に移住する』
2月4日に飛び出したトランプ大統領の驚きの提案は、国際社会に大きな波風を立てています。
トランプ大統領の発言は、ガザにおける悲劇やレバノンに対するイスラエルの執拗な攻撃、
繰り返されるハマスやヒズボラの幹部の暗殺などを目の当たりにしても、口では非難するものの、
一切行動してこなかったサウジアラビア王国やヨルダン、アラブ首長国連邦などが、
重い腰を上げて積極的に動き出すことに繋がりました。
『パレスチナ人の自決権を保証し、かつ2国間共存の解決を図るための枠組みを提案する予定だ。』
サウジアラビア王国の皇太子モハメッド・ビン・サルマン(MBS)は、来訪したルビオ国務長官にそう告げて、
トランプ提案に反対し、代わりに“アラブによる解決策”を提示しようとしているようです。
2月20日は急遽、エジプト・カイロでアラブ首脳・外務大臣会合を開き、ガザの解決法について、
アラブ諸国が話し合う場が設けられ、アラブ社会としてどのような提案をすべきかについて協議するようです。
トランプ政権誕生後、アラブ諸国として初めて首脳会談に臨んだヨルダンのアブドラ国王の対応が弱腰だったと
アラブ社会では激しく非難されたのことですが、それを機にアラブ諸国が目覚めたとも考えられます。
アラブ諸国が緊急会合を行っているのと並行して、同じくカイロでガザにおける停戦の第2段階についての協議が
イスラエルとハマスの代表の間で、カタールとエジプト、そして米国の仲介の下、行われますが、
イスラエル軍のガザからの完全撤退と、人質の全員解放、
そしてハマスが新生パレスチナに関与しないという約束が含まれるため、その交渉は極めて困難なものとなると予想できます。
トランプ政権が極めてイスラエル寄りであることに気を良くしたネタニエフ首相と極右勢力は、
力による平和をより信じるようになっており、極右については停戦合意を破棄し、徹底的にガザを破壊し、
ヨルダン川西岸地域もイスラエルによる占拠を目指し、ついでにレバノンもシリアも制圧すべきと、
鼻息がより荒くなってきています。
先行きが読めない事態になってきていますが、国際社会に“平和”が近々訪れることは期待できるのでしょうか?
今週号の【2-国際情勢の裏側】では、
【トランプが破壊する国際秩序と安定‐戦争の再燃・拡大とロシアの高笑い】
と題してお話しします
今回のメルマガも長くなりましたが、どうぞ最後までお付き合いくださいね。
それでは今週号、スタートします★
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