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ビジ選☆リーダーズ Vol.1081『キーエンス流 性弱説経営』( 高杉康成)

ビジネス選書&サマリーリーダーズ
■性弱説経営とは 顧客が教えてくれたニーズが、すべて新商品に採用できるとは限ら ない。たとえば、顧客の要望を聞いてタブレットPCの新商品を開 発したとする。 顧客の要望は「多少高くても良いから、小さいタブレットPCが欲 しい」というものだったとする。これに対応するために、ひと回り 小さい新商品を従来品より2000円高くして売り出した。 ところが、この商品はまったく売れなかった。理由は、顧客ニーズ の罠にはまったからだ。顧客は、商品に対して、自分が感じたこと を話してくれる。そこから様々な要望、ニーズがわかる。 だが、顧客が話したことがすべて採用できるニーズとは限らない。 「顧客の要望通りに新商品を作れば売れる」という性善説的な考え をしていると、この罠に引っかかる。 ★ この場合、顧客のニーズは2つに分けて考えることができる。まず 「小さいサイズが欲しい」であり、もう一つは「価格が多少高くて も良い」だ。問題は、これらの要望の根拠だ。 「小さいサイズが欲しい」というニーズについて詳しく聞いていく と「色々持ち物が増えたので、小さいタブレットPCが欲しい」と なる。ここまで掘り下げていけば、根拠がわかり、納得もできる。 次に2つ目の「価格は多少高くてもいい」についても詳しく聞くと 「本当は安い方がいいが、サイズが小さくなるなら価格は妥協しな いといけないと思った」ということがわかった。 ★ 一見すると、どちらも「なるほど」と思えるが、価格については文 末に「思った」とあるのがポイントだ。サイズについては「持ち物 が増えた」という事実に基づいた要望だ。 ところが、価格に関する話には、具体的根拠がなく、意見に過ぎな い。しかも内心「安いほうがいい」と思っている。本心と真逆のこ とを話しているわけだ。そもそもニーズとして正しくないのだ。 そんな意見をニーズとして商品に反映してしまったから失敗したの だ。コスパやタイパというように、今は効率性が求められる。仮に 小さくても、価格が上がればコスパがあわないとされるのだ。 ★ このように、顧客の声を丁寧に分解・分析すればわかるのに、罠に かかってしまうのは「顧客の要望通りに新商品を作れば売れる」と いう前提に立っているからだ。 顧客の声は重要だが、言われた通りに作りさえすれば売れるわけで はない。顧客ニーズという言葉を錦の御旗にして、要望通り商品を 作ったところ売れなかったという失敗談は星の数ほどあるのだ。 ここで「顧客の要望通りに作っても売れないかもしれない」という 前提を持っていれば「価格が高くてもいい」という顧客の思いを新 商品開発に反映させて失敗するケースはなくなるはずだ。 ★ 2つの違いは、前者が「性善説」に立っており、後者が「性弱説」 に立っている点だ。ビジネスの場において、当事者をどんな性質を 持つ人として捉えるかの違いだ。 「人は皆、本来善人であり、正しく聞けば正しく答えてくれる」 「やるべきことをきちんとできる」「物事の道理や常識をわかって いる・実践できる」と捉えることh「性善説」だ。 一方「人は本来弱い生き物なので、難しいことや新しいことを積極 的には取り入れたがらない。目先の簡単な方法を選んでしまいがち だ」という捉え方は「性弱説」だ。 先程の例では「顧客は自分の困りごとや感情を正確に把握して言葉 にすることは難しいかもしれない」「思いつきを何となく話してい るだけかもしれない」という視点に立つものだ。 どちらの前提に立つかで、会社も個人も成果が大きく変わってく る。大切なことは事実と根拠だ。「顧客の話には事実に基づかない 意見や感想も含まれている」と性弱説に立つことが大事なのだ。

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