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「魔術師の仮面を剥ぐ:パラケルススと偽パラケルスス」(前編)

BHのココロ
  • 2025/02/02
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今回のメルマガは、ヒライ研@本郷の一年間の総仕上げとして、池袋のロケット・カフェで開催した食事会の前におこなった講演「本当のパラケルススと偽パラケルスス」(前半)の文字起こしに修正加筆をくわえたものです。YouTube のBHチャンネルに講演の動画もアップしてありますので、そちらもお楽しみください。 講演「本当のパラケルススと偽パラケルスス」 1. はじめに  スイス人医学者パラケルスススにたいして現代人がもつイメージは、実像から乖離して肥大化し、ほぼ魔術師のような姿で受けとられています。 たとえば、第二次世界大戦中にドイツでつくられたパブスト監督の映画『パラレルスス』も、当時にしては驚くべき特殊効果を駆使して、魔法使いの印象を大いに漂わせているものとなっています。この写真は白黒画像なので見難いのですが、パラケルススのそばに怪しい実験器具などがおかれています。  本講演の冒頭では、パラケルススの多様なイメージについて、現在どのようなものが流布しているかを見ていきたいと思います。悪い方のイメージから見ていくと、彼は放浪癖があり、いろいろな土地を点々と移り歩き、まったくひとつの場所に落着けなかった人として知られています。 またいつも酩酊している姿、つまりこの映画から抜きだした写真どおりのイメージであり、酒杯をもって酒場にたむろしている姿が描かれています。こうした姿は彼が生きた時代、あるいはその直後に彼の論敵と目される人々が書き記したもので、当時の悪評がそのまま後代に伝わり、だんだんと流布したものなのです。 こうした悪評に付随して、怪しい魔法を使うイメージもあります。この「魔法」は、ほぼ錬金術のことを指している場合が大半です。さらに、悪魔と交流しているといった流言まであります。  こうした悪いイメージから出発して、今度は良い方に目を移してみましょう。彼の生きた時代には、古代の医学書には記されていない「新しい病気」として梅毒が流行しており、その治療薬として偽薬を売る人々が暗躍していました。

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