■なぜ、日本はドイツに抜かれたのか
日本は、名目GDPを55年ぶりにドイツに抜かれた。経済大国世
界第3位の地位をドイツに奪われたのだ。ドイツは日本よりも3分
の1も人口が少ないにもかかわらずだ。
しかも、ドイツ人の労働時間は、日本人よりはるかに短い。長期休
暇もたっぷり取る。残業しながら働き続けている日本人は、ゆった
りと働いている時短国家ドイツに抜かれたのだ。
これに対して「ドイツのインフレと円安が原因だ」という意見もあ
る。たしかにこれも一因だ。だが、主な理由は、ドイツの成長率が
日本のバブル崩壊以降、日本を上回り続けたことにある。
ドイツの名目GDPは、30年かけて日本に肉薄した。インフレと
円安はダメ押ししたに過ぎない。日独経済の成長率と労働生産性の
違いが日独逆転の原因なのだ。
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さらにショックなことに、ドイツ人は日本人より稼いでいる。過去
30年日本の平均賃金は下がり、ドイツは大幅に上昇した。市民一
人当たりの名目GDPでも、ドイツは日本に水を開けている。
日本人は、プライベートの時間を犠牲にして、真面目に長時間働け
ば、成果が出て、会社の業績が上がり、自分の給料が増えると信じ
てきた。だが、この考え方は間違いだ。
これをきっかけに、日本人は働き方を見直すべきだ。もちろん、い
きなりドイツ人のやり方をコピーしても成功しない。ドイツとは、
商慣習や法律制度などの違いがあるからだ。
それでも、ドイツ人の働き方の中には、日本人が応用できるものも
少なくない。日本でも使えるものを選び出して、仕事を効率化して
生産性を高めていくべきだ。
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ドイツ人は仕事が残っていても、夕方になるとさっさと退社してし
まう。18時ごろにはオフィスから人影は消える。夜遅くまで残業
している人などほとんどいない。
まして土曜日や日曜日には、誰もオフィスでは働かない。コロナ禍
以降、テレワークを行う人が増えてからは、オフィスで働く人の数
はさらに少なくなった。
ドイツは、世界一の時短国家だ。OECD加盟国中最短だ。日本
は、第15位だ。労働時間を10時間とすると、ドイツ人の労働時
間は日本人より年間27日分短い計算になる。
ドイツ人の労働時間が日本と同水準だったのは、はるか36年前の
ことだ。つまり、労働時間短縮の面では、日本はドイツに36年遅
れているのだ。
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ドイツの労働時間が日本より大幅に短いのには、大きく2つの理由
がある。まず労働時間に関する法律による規制・監督が日本よりも
はるかに厳しいことだ。
ドイツの企業や役所、商店では、1日10時間を超える労働は禁止
されている。理由は、働く人たちの健康を守るためだ。長時間労働
は体に悪いという考えが浸透しているのだ。
長時間労働をさせるブラック企業には、優秀な人材は集まらない。
これは企業にとって深刻なダメージだ。だから、企業も働きやす
く、ワークライフバランスが良好な会社を目指す。
「一日の労働時間が10時間を超えない」「長時間労働させない」
というのがドイツ企業の基本だ。部下を長時間働させなくては成果
が出せないような管理職には「無能」という烙印が押される。
もう一つ、効率性を重視し、無駄を嫌う国民性も大きい。ドイツ人
は、極端に無駄を嫌う。会議の開始や列車の到着が遅れるだけでも
不平不満を口にする。
仕事の時は、能率や効率性を重視し、無駄な会議や見返りが期待で
きないような仕事を極端に嫌がる。そういう仕事には、はじめから
時間や労力を投入しようとしないのだ。
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