池田清彦のやせ我慢日記
/ 2024年11月08日発行 /Vol.275
INDEX
【1】やせ我慢日記~大地震に備えよ~
【2】生物学もの知り帖~クロマダラソテツシジミ~
【3】Q&A
【4】お知らせ
『大地震に備えよ』
前回の続きを書くとすればインパール作戦の撤退戦なのだが、悲惨な話なので、元気がちょっと出ないので少し後回しにして、今回は南海トラフ巨大地震をはじめとする、これから日本列島を襲うであろう巨大地震から身を守って、生き延びるにはどうしたら良いかという話をしたい。
まず2030年代にほぼ確実に日本を襲うと考えられている南海トラフ巨大地震や、いつ起きても不思議ではないと言われている、首都直下地震について前にも書いたかもしれないけれど、少しおさらいしよう。日本列島とその周辺域は、4つの動いている巨大プレート(太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート)がぶつかっている世界でも特異な場所で、二つのプレートの境界面で巨大地震が発生する。
2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は太平洋プレートが北米プレートの下にもぐり込むところで起きた。この地震は日本の観測史上最大規模の地震で、マグニチュード(M)は9.0で、1900年以降世界歴代4位の大地震であった。これを機に日本列島は千年ぶりの「大地変動の時代」に入ったとされる。この地震の結果、内陸にある活断層の活動度が高まって、内陸地震が起き易くなってきた。
内陸地震の内で最も懸念されるのは「首都直下地震」であるが、現在の地震学の知識では予知は不可能と言われている。政府の地震調査委員会はM7クラスの首都直下地震が今後30年以内に発生する確率は70%であるとしている。津波の恐れは少ないが、大規模火災が発生する恐れがある。それを受けて土木学会は、首都直下地震が起きた場合に、復興までの長期的な経済と資産の被害総額は1001兆円(内閣府の試算では142兆円)に上るとの推計を発表した。これは経済被害だが、人的被害は最大で2万3千人で、その大半は火災による死亡と推測されている。東日本大震災による死者不明者は1万8420人であるから、それを上回る規模の死者数である。それ以外にも、都市部の直下型地震では800万人の帰宅困難者が発生し、避難所生活者が290万人に上ると推定されている。
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