ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター（有料版）2024年7月21日（日）号

--------------------------------------------------------------------------------------------------------- トランプ前大統領、銃撃　新たな陰謀論「ブルーアノン」広がる　アメリカ、さらなる分断進む　いずれ分裂へ？ ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 　7月13日、米ペンシルベニア州バトラーで行われた選挙集会中にドナルド・トランプ前大統領が銃撃された。トランプ氏は右耳を負傷し、聴衆1人が死亡、2人が負傷した。 　容疑者は20歳のトーマス・マシュー・クルックス氏で、現場で射殺された。クルックス容疑者は事件当日朝に地元の銃砲店で銃弾50発とホームセンターではしごを購入した（1）。 　容疑者は内向的な性格で、コンピューター好きの工学専攻の学生である。FBIの調査によると、容疑者は事件数日前にバイデン大統領とトランプ氏の画像を検索し、「重度のうつ病」についても調べていたことが判明した（2）。 　警備当局は事件約1時間前に容疑者を不審人物として認識していたが、銃撃の約20分前に見失っていた。地元警察は事前に「建物の警備に人手が不足している」とシークレットサービスに警告した。 　そしてトランプ氏の登壇直前に、建物の屋上でライフル銃を持った容疑者が目撃されていた（3）。 　この事件は、米国の銃規制問題や政治的分断、警備体制の課題など、さまざまな問題を浮き彫りにした。そして今後の大統領選挙戦や政策議論に大きな影響を与える可能性もある。 目次 ・ブルーアノン ・アメリカ建国、銃の神話 ・アメリカのさらなる分断進む　いずれ分裂へ？ ・ブルーアノン 　銃撃事件の直後、リベラル派の陰謀論がSNS上で急速に拡散。これらの陰謀論は「ブルーアノン」と呼ばれ、トランプ氏が自らの選挙キャンペーンを有利に進めるために銃撃を自作自演したと主張。 　ブルーアノンは、リベラル派が信じる陰謀論を指す。具体的には、トランプ氏が自らを狙った銃撃を演出したという主張が含まれている。 　一方、Qアノンが極右の陰謀論であるのに対し、ブルーアノンはその対極に位置するリベラル派の陰謀論。 　Qアノンはトランプが「影の国家」と戦っていると主張し、ブルーアノンはその逆で、トランプが悪事を働いているとする陰謀論だ。 　銃撃事件の直後、SNSでは「#staged」や「#fakeassassination」といったハッシュタグが急速に広がった。これにより、事件が自作自演であるとの憶測が飛び交う。ブルーアノンの陰謀論は、政治的な議論や分断をさらに深める要因となっている。 　共和党と民主党の間での対立が深まる中、これらの陰謀論がさらに火種となっている。 　このようにトランプ前大統領の銃撃事件は、アメリカの政治的分断や陰謀論の広がりを象徴する出来事となっている。 　ブルーアノンの陰謀論は、リベラル派の一部が信じる陰謀論を揶揄するために使われる言葉ではあるが、しかしQアノンと同様にアメリカの政治的分断を象徴する。 ・アメリカ建国、銃の神話 　今回の事件は、アメリカにおける銃の問題を改めて浮き彫りに。