ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター（有料版）2024年5月11日（土）号

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 　　はじめに -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 　国の、水俣市民への”行政ハラスメント”が収まらない。 熊本県水俣市で1日にあった水俣病被害者側と伊藤信太郎環境相との懇談の際、環境省職員が被害者側のマイクを切って発言をさえぎった問題について、熊本県の木村敬知事は10日の定例記者会見で、環境相や職員らが抗議を受けていた状況を「事実上のつるし上げになっていた」（1）と表現。 　ただ、記者から「つるし上げという認識なのか」と問われ、「申し訳ありません。言葉を訂正します」（2）と謝罪する。 　懇談をめぐっては、環境省が準備した台本に被害者側の発言が待ち時間に近づいた場合の対応として、「3分でマイクオフ」と明記されていたことも明らかに（3） 　問題の背後には、環境省の、水俣地域への「行政ハラスメント」がある。 　水俣病は原点として生まれた環境省は、しかし時とともに、公害問題の重要度が相対的に低くなっていく。高度経済成長を経て、1990年代以降、「公害から環境へ」の流れが強まり、地球温暖化や生物多様性の問題も浮上してきた。 　実際には環境省は、「つるし上げ」どころか、水俣病の被害を訴える原告側と訴訟で徹底的に争い、独自に救済へ乗り出す機運はない。 　現実には、国と環境省の、強き者から弱き者への「行政ハラスメント行為」がそこにはある。 （1） 藤崎真二・古川剛光「発言訂正し謝罪」西日本新聞、2024年5月11日付朝刊、26項 （2） 藤崎真二・古川剛光、2024年5月11日 （3） 岩谷瞬「「3分でマイクオフ」台本に環境省明記」西日本新聞、2024年5月11日、26項 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 日本製鉄、USスチール買収報道のお笑い　　日本の、海外企業の買収には目をつむるくせに、海外企業の日本への買収は、「ハゲタカ」呼ばわりして非難　 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 　日本製鉄は、今年9月までの完了を目指すと公表していたアメリカの大手鉄鋼メーカー「USスチール」の買収完了の時期について、今年12月までをめどに延期すると発表。 　日本製鉄は、買収に必要なアメリカ当局からの承認が得られる時期を精査した結果としており、今年11月に行われる米大統領選に向けた思惑も絡み、買収は難航する見込み。 　日本製鉄は昨年12月、USスチールを買収することで両社の間で合意し、今年9月までにUSスチールを子会社化し、買収の完了を目指すと公表。 　しかし買収計画をめぐっては、USスチールの株主総会で先月、承認されたものの、鉄鋼業界の労働組合が買収に反対する姿勢を示している。 　また、大統領選挙をにらみ、トランプ前大統領が、「私なら即座に阻止する」（1）と述べ、もし自身が大統領選に勝利した場合には日本製鉄の買収を認めない考えを示す一方、バイデン大統領も「USスチールは完全にアメリカ企業でありつづけるべきだ」（2）と話す。 　日本のマスゴミの報道は、日本製鉄に対し、融和的だ。しかし、残念ながら、再び、日本のメディアは世界に対し”お笑い”ぶりを再び、発揮している。 目次 ・日本の、海外企業の買収には目をつむるくせに、海外企業の日本への買収は、「ハゲタカ」呼ばわりして非難 ・日本への少ない対内投資額「北朝鮮より低い」 ・”日本製鉄マンセー”記事を量産するマスゴミ