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『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』
~時代の本質を知る力を身につけよう~【Vol.51】
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【今週号の目次】
1. 気になったニュースから
◆ 小林製薬の健康被害問題について(前編)
2. 今週のメインコラム
◆ 世の中のウソと真実について
3. 読者の質問に答えます!
4. スタッフ“イギー”のつぶやき
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1. 気になったニュースから
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◆ 小林製薬の健康被害問題について(前編)
現在までに5人もの関連死が疑われている小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」による健康被害について、前号でも少し触れましたが、今号ではこの問題をもう少し掘り下げておきたいと思います。なおその後、「紅麹コレステヘルプ」だけでなく、同社の「ナイシヘルプ+コレステロール」でも被害が出ていることが判明しています。まず、前号では、以下のように述べました。
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現在問題になっている小林製薬のサプリによる健康被害についても、メディアは表面的なことだけを追いかけていますが、抜本的な問題として、安倍政権時代の経済政策の一環で、2015年、これまでの「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」というジャンルに加え、新たに「機能性表示食品」というジャンルを作って健康食品市場の参入障壁を下げたという経緯を知っておく必要があります。端的に言えば、国民の健康よりも経済が優先されたことが今回の健康被害にも繋がっているのです。
トクホでは、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、たとえば「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されますが、表示される効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可する制度になっています。
これに対して、機能性表示食品は、あくまでも事業者の責任において機能性の表示が認められる食品です。販売前に安全性や機能性の根拠に関する情報を消費者庁に届け出ればよいだけで、国の審査や消費者庁長官の個別の許可を受けるものではありません。
ひと頃から、サントリー、キリンといった大手だけでなくさまざまな中小企業がこぞって健康食品市場に積極参入していますが、背景には経済界と政界の癒着があり、今回の小林製薬の健康被害の根底にある問題として見逃してはならないと思います。トクホとして認められなかった健康食品が、機能性表示食品として市場に出回る事態に対して、安全性を懸念する声は当初からあがっていたのです。
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この2015年の規制緩和の結果、図1に示す通り、2023年には約7,000億円規模の新たな市場が生まれました。届け出数は約6,800件とトクホの6倍を超えるそうです。市場原理からすれば、国の審査が厳しくて、許可を得るまでに大きな資金と長い時間が掛かるトクホよりも、手軽に健康効果を謳えるジャンルが出来たわけですから、トクホの市場がシュリンクして機能性表示食品の市場が一気に立ち上がったのは自然な流れと言えます。しかし、まさにここにこそ、今回小林製薬のサプリが健康被害を引き起こした最も決定的な原因があるわけです。
当時、第二次安倍政権下において進められたこの規制緩和は、以下の図2に示すような流れで行われました。そしてこの規制緩和を推進したのは、――
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