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グーグルが最強の企業になったわけ(後編・下) 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.7】

『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』  ~時代の本質を知る力を身につけよう~【Vol.7】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【今週号の目次】 1. 最近気になったニュースから    ◆ 軍装で戦車や戦闘機と写真を撮る政治家たち 2. 今週のメインコラム    ◆ グーグルが最強の企業になったわけ(後編・下) 3. 読者からの質問に辻野晃一郎が答えます! 4. スタッフ“イギー”がつぶやく今週の辻野晃一郎 ──────────────────────── 2.今週のメインコラム ──────────────────────── ◆ グーグルが最強の企業になったわけ(後編・下) ChatGPTが登場して、生成AIの分野を巡るテックジャイアントたちの動きが活発化する中、新たな正念場を迎えたグーグルも巻き返しに躍起ですが、そんな彼らは日々どのように働き、何を成長のエンジンとしてきたのでしょうか。そしてそこには、近年、国際的な産業競争力を急速に失いつつある日本の行き詰まりを打破するヒントはないのでしょうか。 前編、中編、後編・上、後編・下の4回に分けて、私が経験したグーグルの働き方を具体的に紹介してきましたが、今号はいよいよその最終回になります。全編を通じて、皆さん自身や、皆さんの会社の働き方をより良くしていくためのヒントが一つでも二つでも見つかることを願っております。なお、グーグルの話は、今後も折に触れ、取り上げていきたいと思います。 ◇ 「悪事を働かなくてもお金は稼げる」 「Wisdom of crowds(集団の叡智)」は、インターネット時代の重要な概念であると同時に、民主主義の存立根拠でもあります。5月19日に配信した中編では、グーグルがホームページに掲載する 「グーグルが掲げる10の事実」 という10ヵ条の行動規範の中に、「ウェブ上の民主主義は機能する」という項目があることと、グーグルでの物事の決め方や進め方が極めて民主的だ、という話をしました。 さらに、その「10の事実」の中には、「悪事を働かなくてもお金は稼げる」という項目もあります。あるいは、在籍当時しばしば使われた言葉に、「Don’t be evil(邪悪になるな)」というものがありました。まるで、小さな子供に親が言って聞かせるようなことが、敢えて行動規範の中に盛り込まれて大切にされてきたのは、一体何故なのでしょうか。 民主主義とは、上意下達やトップダウンではなく、「民」が「主権者」という仕組みです。すなわち、物事の良し悪しを、民が主体的に話し合って判断するのが本来あるべき姿です。その反対が、専制主義や全体主義です。以前に、東芝の不正会計や財務省の公文書改ざんを例に出しましたが、これら組織ぐるみの犯罪に共通するのは、民主主義的なプロセスが機能する余地がほとんどなかった、ということでしょう。トップダウンでの命令に現場が抗することがほぼ不可能な環境の中で、これらの悪事が発生したのです。すなわち、当時の東芝や財務省などの組織は、民主的に機能していたのではなく、全体主義的に機能していたということが言えると思います。Wisdom of crowdsがまるで機能していなかったのです。この状況は今でも何も変わっていないでしょうし、日本の組織のみならず、このようなスタイルの組織が未だに多いのが世の中の現実だと思います。 これに対して、グーグルでは、たとえトップからの指示であっても、それが不正につながるようなものであったり、現場が納得できないようなものであったりした場合、現場ではWisdom of crowdsが正常に機能して――

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