□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
レイラインハンター内田一成の「聖地学講座」
vol.247
2022年10月6日号
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆今回の内容
○心のありようで変わること
・チベット仏教再び
・アニミズムとシャーマニズムを超えて
・心のありよう
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
心のありようで変わること
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
9月中は例年のツーリングの取材が続き、ひと月で6000キロ以上を走りました。先日、ようやく終えて、今は取材のまとめをしながら、出会った風景を振り返ったりしています。
今年は天気も不安定で嵐や酷暑に見舞われ、オートバイでは身の危険性さえ感じることもありました。またそんな天候の影響でスケジュールがタイトになってしまったこともあって、一日に700キロ以上も走る日がありました。
久しぶりになかなか過酷な取材となり、走行中に、何度も砂漠のレースやパミールを越えていったときの荒涼たる山々が続く光景などを思い出していました。そして、天候が回復すると、目の前に広がる緑と水の豊かな日本の風景が、まるで奇跡のように感じられました。
そんなツーリングの中でふと意識したのは、宗教が生まれる環境のことでした。
単調で厳しい環境の中にいると、人は自分の内面に関心を向けていきます。そして、砂漠という環境の中からは、ユダヤ教が生まれ、そこからキリスト教やイスラム教が派生しました。パミールと同じような、岩と雪の圧倒的で厳然とした自然に取り巻かれたチベットではボン教と呼ばれる独特の自然信仰が生まれ、それが仏教と結びついてチベット仏教の体系が出来上がりました。
それに対して、自然が豊かで暮らしやすい熱帯や温帯では、万物に霊が宿るというアニミズムが続いてきました。気候・自然環境に恵まれたところでは、自らの内面に深く沈降していくのではなく、恵みを与えてくれる自然に素朴に感謝する心性が育まれるということでしょう。日本の神道も、また日本化した仏教も「山川草木悉皆成仏」といった言葉に端的に表れるように、アニミズム的で長閑ともいえる世界観を持っています。
もっとも、修験道や密教では、あえて単調で厳しい環境に身を置くことで、自己の内面に沈降していく修行の体系を築いてきました。
かつて、単身ヨーロッパに遠征して、過酷なグランプリに挑戦し、年間チャンピオンを獲得したレーサーがいました。「ワークス」と呼ばれるメーカーチームでもなく、大きな組織を後ろ盾とした資金潤沢なチームとも違う、小規模なプライベートチームが年間タイトルを取るといった快挙は、後にも先にも彼の例があるだけです。その彼が、オートバイライディングを「修行」に例えていました。一人黙々とオートバイを走らせる体験は、修験道や密教の修行にたしかに似ています。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)