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週刊 Life is Beautiful 2022年9月6日号:全個体電池に社運を賭けるトヨタ自動車

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 全個体電池に社運を賭けるトヨタ自動車 ここ1年ほど、トヨタ自動車と全個体電池に関する記事をしばしば見かけます。トヨタ、日産も注目の「全固体電池」。EV搭載に向け開発進む次世代バッテリーの現在地トヨタ、全固体電池は特性を考えハイブリッド車から導入へ 2020年代前半に量産車投入で、電池関連の総投資額は1.5兆円トヨタと東京工業大が開発する全固体電池の登場はエンジンを場外に送るかトヨタと組む全固体電池の権威「実用化は5年以内」、研究費も人材も10倍の中国に勝つ方法 私は、長年トヨタ自動車を含めた日本の自動車メーカーと直接ビジネスをしてきたこともあり、彼らが「EVシフト」に乗り遅れてしまった理由や、ソフトウェア開発で出遅れてしまったしまった経緯などを、多くの人よりも理解しているつもりです。 特にトヨタにとっては、「ハイブリッド市場での大成功」が足を引っ張る形になっているのはとても皮肉なことですが、あるフェーズでの成功者が、次のフェーズに乗り遅れることは、どの業界でもしばしば起こることです。 典型的なのが、フィーチャーフォン(日本ではガラケー)時代の覇者であった Nokia と Motorola が、Apple が起こしたスマートフォンへの急激なシフトにまともな対応が出来ず、Apple、Google、Samsungに主導権を渡してしまったケースです。 ガソリン価格の高騰により、燃費の良いハイブリッド車の人気が高いのもトヨタのEVシフトを難しくしています。現時点ではハイブリッド車こそがトヨタにとっての「飯の種」であり、EVシフトを急ぐ理由は全くないのです。 一方、ディーゼル事件で消費者からの信頼を失ったドイツのメーカーは、高級車市場で Tesla にシェアを激しい勢いで奪われていることもあり、急速なEVシフトをせざるを得ない状況に追い込まれています。ポルシェがいち早くTaycanをリリースしたのはそれが理由だし、フォルクスワーゲンも本気でEVシフトに取り組んでいます。 トヨタ自動車は、ハイブリッドの次のフェーズとして水素自動車に力を入れていましたが、その戦略がEVに足元を救われる状況になっているのも大きな問題です。トヨタ自身も「水素の時代」がすぐに来るとは期待していなかったと思いますが、このまま「EVシフト」が急速に進んでしまうと、トヨタ自動車が描いていたような「水素の時代」は来なくなってしまう可能性が高いのです。 今年に入って、ようやくトヨタも重い腰を上げて、積極的なEV戦略を発表しましたが、現時点で市場に出ているのは bZ4X のみで、台数も限定的です。 トヨタ自動車のような大きな会社が、進む方向を変えるのは簡単ではないし、稼ぎ頭のハイブリッドから市場を奪うようなことも出来ないので慎重にならざるを得ないのは分かりますが、激しいEVシフトが世界中で起こっている2022年の市場でほとんど売るものがない状況は、致命的とは言わないまでも、大きな問題です。 そんな中で一つ気になるのが、トヨタやホンダが力を入れている全個体電池です。全個体電池は、安全かつ急速充電が可能な「次世代電池」という位置付けで、トヨタやホンダが莫大な研究開発資金と投じると発表しています。 トヨタ自動車は「2020年代の前半」には、全個体電池を搭載した自動車を発売すると宣言していますが、実用化にはまだ課題が多く、実際にいつごろ市場に投入されるかは、現時点ではなんとも言えません。 トヨタの狙い通りに2020年代の前半に実用化が実現し、2020年代後半には「量産」が始まるのであれば、それがトヨタにとっての大きな武器になりますが、万が一それが、3〜5年遅れた場合にどうなるのかがとても気になるのです。 現時点では、EV車は全てリチウムイオン電池を採用しており、その電池の確保のために、 Teslaや他の自動車メーカーは莫大な投資をして、工場を作り、パートナーシップを組むだけでなく、それを作るのに必要な鉱山の確保にまで手を出しています。 外から見ている限り、トヨタ自動車は「全個体電池の早期実用化」に賭けているように見えますが、それは、裏返せば「リチウムイオン電池へは必要最低限の投資しか行わない」ことを意味します。 つまり、トヨタ自動車は、「とりあえずリチウムイオン電池で電気自動車を大量に作って、シェアを確保する」ようなことはせず、「次世代電池である全個体電池をいち早く実用化させ、それを使って一気に市場を制覇する」戦略を採用しているように私には見えるのです。 確かに、今売れているハイブリッド車のことを考えれば、急いでEVシフトをさせるメリットはトヨタにとっては少ないし、「全個体電池」という強力な武器を持っていれば、2〜3年の遅れは十分に取り戻せると考えたくなるのも分からないでもありません。 この戦略の弱点は、「全個体電池の2020年代前半の実用化」に大きく頼っている点です。それが万が一にでも3〜5年遅れてしまえば、トヨタは今まさに起こっているEVシフトの大きな波をすっかり逃すことになってしまうことになってしまうのです。 例え3〜5年遅れても「全個体電池は強力な武器になる」可能性は否定できませんが、他のメーカーも電池のイノベーションには投資し続けるので、そこまで遅れてしまうと、それほどの差別化要因にはならない可能性が大きいと思います。 ちなみに、この件に関して、先週紹介した GPT-3 に尋ねたところ、こんな答えが返って来ました(DeepL で翻訳済み)。EVの市場はまだ比較的小さく、トヨタは今のところ他の分野に注力しています。トヨタは、EVより将来性のある水素燃料電池技術に積極的に投資している。 トヨタはハイブリッドやプラグインハイブリッド技術にも力を入れており、完全な電気自動車に向けたより現実的な中間ステップと見ている。 EVのインフラがまだ十分でなく、普及しないかもしれないものに大きな投資をしたくない。トヨタは、現在の電池技術ではお客様の期待に応えられないと考え、電池技術の向上を待ってからEVを発売している。 DALL·E 先週、GPT-3 のことを書いたばかりですが、今週は同じOpenAIの DALL·Eで色々と試してみました。GPT-3 と同じく、プロンプトとして与える文字列が重要で、思ったような結果を得るには慣れが必要です。 例えば "a cat working as a caddy at a golf tournament(ゴルフトーナメントでキャディとして働く猫)" と入力すると、こんな絵を生成してくれます。ゴルフバッグの横にはいますが、キャディをしているようには見えません。特にスタイルを指定しないので、実写で生成しようとした結果、こうなったようです。 スタイルとして"Vector Graphics"を指定するとこんな結果です。自由度が上がった結果、ちゃんとキャディをしていることが分かります。

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