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週刊 Life is Beautiful 2022年8月23日号:自動運転ドローンの初フライト

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 自動運転ドローンの初フライト 私がファウンダーの一人として関わっているnetdronesですが、ようやく一つのマイルストーンを達成しました。テストサイトでのドローンの自動運転です。netdronesは、最初は私が庭を荒らしに来る鹿を追い払うために、定期的にドローンを飛ばせないかと考えた際に、ドローン業界がパソコンやスマホと比べてまだまだ未熟であることに気がついた結果です。 ハードウェアが標準化されていないのはもちろん、オープンソースのソフトウェアのクオリティはまだまだ低いし、ソフトウェアの開発環境も全く整っていないのです。 そこで、考えたのがハードウェアとソフトウェアの両方をオープンな形で提供することにより、スマホアプリを作るぐらいの手軽さで、ドローンアプリを作れる世界を実現したいと考えたのです。 そこでトップクラスのエンジニアを数人集め、VCからも資金調達をしてスタートしたのがnetdronesです。しかし、ちゃんとした自動操縦を実現するには、最新の人工知能の技術を使ってドローン上で物体認識などをしなければならず、そのために必要なハードウェアの設計もゼロからしなければならず、色々と苦労して来たのです。 最近になって、ようやく Business Entry Strategy (どんなビジネスに最初に取り組むのか)も明確になり、まずはその市場に特化した形でハードウェアとソフトウェアの作り込みが始まり、一気に「製品化」が加速しているのです。私が作るベンチャーは、常に数年先を見ているため、「売り上げに結びつく前に息切れしてしまう」リスクがありますが、今回は、ちょうど良いバランスの(早すぎず、でも、遅すぎもしない)マーケットを見つけたので、そこで最初の勝負をする予定です。 ちなみに、私は Chairman/Chief Scientist という役割で、コードは書かずに会社のビジョン、大まかなアーキテクチャ、および戦略にのみ関わっています。一旦コードを書き始めてしまうと、結局は(mmhmmのように)フルタイムになってしまうので、あえてコードには手を出さないことにしているのです。 幸いなことに、「私に出来ないこと」をやってくれるエンジニアが集まった少数精鋭の会社なので、(生産性の低さに)ヤキモキすることもありませんが、今後会社を大きくする際に、どうやってエンジニアのレベルを保つかが最も大きなチャレンジになるだろうと感じています。 GameFi のビジネスモデル 「中学生にも分かるWeb3」シリーズで、Play2Earnゲーム(GameFi)について触れましたが、今だに誤解している人が多いようなので、もう少し深掘りして、それらがどうして本質的にはゼロサムゲームよりも割が悪いポンジスキームであり、ねずみ講に近い心理状態を関係者の間に作り出すのかを解説したいと思います。 Axie Infinity や STEPN に代表されるPlay2Earn・Move2Earnゲーム(X2Earnゲーム)は、GameFiとも呼ばれますが、これは Game + Finance(金融) から作られた造語で、ブロックチェーンを活用して投資や投機などの金融の要素を加えたゲームのことを指します。 実際、GameFiサービスの多くは、ゲーム業界の人ではなく、金融業界の人、特にDeFi(ブロックチェーンを活用した金融業)の開発に関わった人たちにより作られています。 そのため、これらのサービスは「遊んで稼ぐことが出来る」ことをサービスの魅力の中心に置き、サービス設計・インセンティブ設計をし、マーケティングもそこを主体に置いて行います。 いわゆる「Web3インフルエンサー」が、Axie Inifinity や STEPN の魅力をSNSで語る様子を見たことがある人も多いと思いますが、それはすべて、運営側の綿密なインセンティブ設計の結果(つまり、自分が持っているトークンが値上がりすることを目指したポジショントーク)なのです。 GameFi は、基本的には、ユーザーは最初に、ゲームに参加する権利であるNFTを購入する必要があります。Axieの場合はモンスターNFT、STEPNの場合はスニーカーNFTです。 そして、それを使って遊ぶ(Axieの場合は戦う、STEPNの場合は歩く)ことにより「お金を稼ぐ」ことが出来るのです。 お金の流れに注目して、これを図式化すれば、以下のようになります。 サービスに流れ込むお金は、ユーザーNFTの購入のために支払ったお金なので、ユーザーに対して支払われる賞金の総額がそれを上回ることがないのは明確です。運営側が一切の手数料を取らなかったとしてゼロサムゲーム(売り上げ=賞金総額)、少しでも手数料を取れば、ゼロサムゲーム以下になります。 こんなサービスで参加者皆が稼ぐことが出来ないのは明確です。にも関わらず、これを「稼げるゲーム」としてマーケティングすることは、詐欺に等しいのです。 実際、法律で禁止されている「ポンジ・スキーム」や「ねずみ講」や「悪質なマルチ商法」は、基本的に上の図と同じ仕組みで動いています。 これらの詐欺に共通するのは、集まったお金を気前良く「配当」として渡してしまうことにより、見かけ上の「投資効率・利率」を異常に高く見せてしまう点にあります。 そんなことをしてしまえば、すぐに集まったお金を(配当として)使い切って破綻してしまいますが、悪質な詐欺は、そこに上手なインセンティブの仕組みを加え、既存の顧客が自ら進んで新しい顧客を連れて来るように仕向けます。 「ねずみ講」や「マルチ商法」はそんなインセンティブで動く典型的なシステムで、「顧客が増えている間は初期の顧客はとても儲かる」という「先行者利益」があるのが特徴ですが、「顧客が無限に増え続けない限り必ず破綻する」設計になっています。 これらのサービスは、このインセンティブ設計により、顧客自身がいつの間にか加害者になってしまうのが特徴で、それによって家族に迷惑をかけたり、友達を失ったり、という社会現象にまで発展するのが、これらの詐欺の特徴です。 GameFiもマクロなスケールで見れば、これらの詐欺と全く同じで、表向きはとても投資効率が良い(数ヶ月で元が取れてしまうように見える)先行者利益があるため、彼らがいつのまにか加害者になってしまうユーザーが無限に増え続けない限りいつかは必ず破綻する などの共通点を持っています。 しかし、実際のGameFiの仕組みは、もっと複雑で、一見するとゼロサムゲームではないように見える設計になっています。

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