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週刊 Life is Beautiful 2022年6月28日号:中学生にも分かるWeb3、DAO、DeFi

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 中学生にも分かるWeb3-6(メルマガ限定) DAO, the DAO, Nouns DAO DAOという言葉を目にしたことがある人もいると思いますが、とても分かりにくいコンセプトであるため、理解できないと感じている人も、誤解している人もたくさんいます。 DAOとは、Decentralized Autonomous Organization の略で、日本語に直訳すると「非集権型自律的組織」となります。「非集権型」とは、取締役会や代表取締役社長のような権力を持つ人(リーダー)がいないことを示し、「自律的」とは組織の運営がソフトウェア(ブロックチェーン上のスマートコントラクト)により自動化されていることを示します。 組織をスマートコントラクトで運営しようという発想は、汎用的なスマートコントラクトを実装したEthereumの誕生と共に生まれました。暗号通貨を直接扱うことが出来るスマートコントラクトを活用すれば、これまで人間が行っていた会社経営・組織運営がソフトウェアにより自動化出来る、という発想です。 若干、「打つべき釘を探しているハンマー」のような面もありますが(この表現は、使い道のはっきりしていない技術が先にあり、後からニーズを探し求めるようなケースに使います)、DAOが組織運営における「エージェント問題」を解決できるかもしれない、という可能性があるのも事実です。 「エージェント問題」とは、組織の代表(経営陣や政治家など)が、必ずしも組織の利益を最優先せず、自分たちの利益を優先して行動してしまう問題です。日本の会社の経営陣が自分の天下り先確保のために子会社を作る、政治家が自分と親しい関係のある人々に利益を与えるような政策を実行してしまうなど、実際に、毎日のように私たちの周りに起こっている問題です。 組織経営において最も重要な「予算の配分」の部分をスマートコントラクトにより自動化・透明化することにより、そういった不正が入る余地をなくそう、というのがDAOの発想の根底にあります。 しかし、DAOにも欠点があります。ソフトウェアなので、ソフトウェアにバグがあると大きな問題を生じることがあります。2016年に「the DAO」という組織が作られ、大量のお金(当時流通していた Ethereum の約 14% 、当時の相場で70億円弱)が集まりましたが、ソフトウェアのバグのために、その大半が盗まれてしまう、という事件が起こったのです。 「組織をソフトウェアで運営する」とは、いったい何を意味するかが直感的には理解しにくく、私も当初は全く理解出来ませんでした。そこで、思い切って「最もDAOらしいDAO」と呼ばれるNounsDAOに参加してみました。特徴的なメガネをかけたドット絵で表現されるNFT(Nouns 245)を購入し、NounsDAOのメンバーとして活動してみたのです。 実際に中に入って体験してみると、確かに良くできた仕組みでした。一般的なNFTプロジェクトと違い、NFTの売り上げは創設者たちには一切渡らず、彼らはオークションで発行されるNFTの10%を「開発費」として受け取るだけです。オークションの売り上げは、全てトレジャリーと呼ばれるNounsDAOのウォレットに入り、そこからの出金にはメンバーの同意が必要なのです。 素晴らしいのは、「NFTの10%を創業メンバーに渡す」「メンバーの同意があって始めてトレジャリーのお金を使える」などの仕組みが、全てスマートコントラクトに記述されている点で、これにより、組織の運営が自動化されているだけでなく、完全に透明化されているし、変更も不可能に設計されているのです(別のところにも書きましたが、設計次第では変更可能なスマートコントラクトを作ることは可能ですが、重要な部分はあえて変更不可能に設計してあります)。 これほど素晴らし設計を持つNounsDAOですら、完璧とは言えません。数十億円の規模を持つトレジャリーからの予算を手に入れようと大勢の人が集まっていて、日々(議決権を持つ)メンバーに対してロビー活動をしているのです。 お金が絡むので当然と言えば当然ですが、関係者全員が私利私欲のままに動いてもちゃんと自動的に動いしまう Bitcoin の美しさには敵いません。Bitcoin こそが「究極のDAO」と呼ぶ人がいるのはそれが理由で、Bitcoin を設計した Satoshi Nakamoto の賢さが際立ちます。 ちなみに、DAOに関してはリーダーなしに「メンバーが自律的に協力しながら運営する」のがDAOだと勘違いしている人が多いので注意が必要です。「自律的に」動くのはスマートコントラクトであり、メンバーではないのです。 理想的なDAOは、Bitcoin のようにそれぞれのメンバーが、相談などせずに自分の利益だけを追求したとしてもうまく動いてしまうDAOですが、そんなDAOを設計するのが簡単ではないという事実が、NounsDAOに参加して得た一番の収穫です。 スマートコントラクトを使った「中抜き組織」の排除 ちなみに、必ずしもDAOを使う必要はありませんが、出版社、レーベルなどによる「中抜き」の問題もスマートコントラクトにより解決できる可能性があります。スマートコントラクトを使ってお金の流れを自動化すれば、顧客とアーティストの間を取り持つ役目を果たすだけで利益を上げている業者(中抜き業者)を排除することが出来るし、お金の流れも透明化されます。 良い例が日本のJASRACです。JASRACは、作曲家に著作権料を流すことにより音楽産業を盛り上げるために作られた組織ですが、ジャズ喫茶やピアノ教室から著作権料を徴収している状況を見ると、置かれた立場を利用した「中抜き組織」になってしまっています。 著作権の支払いをスマートコントラクトを使って自動化・透明化すれば、JASRACのような組織は排除出来るし、その分だけアーティストたちへの支払いは増え、ジャズ喫茶やピアノ教室から著作権を徴収する必要もなくなります。 同じことは出版に関しても言えます。出版業界は一昔前のビジネスモデルで運営されているため、電子書籍の時代になっても、作家への印税は小売価格の8%から10%に抑えられています。 スマートコントラクトを使って電子出版をすれば、流通・出版コストを削ることが出来るので、作家への印税を小売価格の70〜80%程度に引き上げることが十分に可能です。 本の所有権をNFTを使って実装すれば、読み終わった電子書籍を中古市場で売却することも可能になるだけでなく、中古市場での売り上げからも、作家に印税を支払うことが可能になります。 この手のシフトはまだ始まったばかりですが、私は必ず主流になると信じているし、すべきだと思います。これだけインターネットが発展した時代に、作曲家・歌手・作家などへの印税が小売り価格の10%以下などというのは不合理極まりない状況です。 ブロックチェーンがより進化し、スピードも早くなり、ガス代が無視できるほどに下がりさえすれば、全てのデジタルコンテンツの流通をスマートコントラクトを使って行うことが可能になります。そうすれば、価値を提供しない中抜き業者が排除され、彼らの受け取る印税が今の数倍になるのは当然も流れなのです。 スマートコントラクトを使えば、売り上げの一部が紹介した人にはいる、アフィリエイトのような仕組みも簡単に作ることが出来ます。電子書籍の場合だと、ブログやTwitterに投稿する書評が販売に結びついた場合、売り上げの10%が紹介者に渡るような仕組みが、スマートコントラクトでとても簡単に実装出来てしまうのです。 DeFi、GameFi、暗号通貨交換所 DeFiとは、decentralized finance (非集権的金融)の省略ですが、実際に decentralized なものは少なく、単に「暗号通貨が絡む金融業」の意味だと思っていただいて結構です(DAppsの多くがdecentralized ではないWeb2.5であるのと同じです)。 具体的には、証券取引所に相当する暗号通貨の交換所、銀行やヘッジファンドに相当する暗号通貨の貸借業(人によってはこれだけをDeFiと呼ぶ人もいます。狭義のDeFi)などがありますが、Play2Earn系のゲームの多くが「トークンエコノミー」と称して、独自の通貨を発行して金融業に近いことも行なっているのが現状です(こちらはとGameFi呼ばれています)。 NFTを初めて購入する人が必ず利用しなければならないのが、暗号通貨の取引所ですが、大きく分けて三種類の交換所があります。

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