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今市的視点 IMAICHI POINT OF VIEW
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6月25日号
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この夏の電力不足も価格高騰も全てロシアのせいという訳ではない~
完全に何もしない岸田政権の問題
参院選がスタートしていますが岸田首相は物価、つまり
値上げの問題に集中しているようで目下のところ電気代
の高騰を憂慮しいきなり電気代軽減に対するポイント還元制
などという、わけのわからない仕組みの導入を打ち出して
います。ただこの夏の電力問題は共有不安と価格高騰という
両方の材料が複雑に絡み合っており、ただ単に節電して
微々たるポイントをゲットすればそれで済むのかという大きな
問題に直面しています。
■昨年末段階で夏の電力供給不足は完全に把握されていた
よくよく調べてみますと昨年12月末に資源エネルギー庁が
今年夏の電力不足を予知する分析内容を議論用の資料として
開示しています。これによると昨年11月、12月の冬の期間
でも東京エリアは電力の安定供給に必要な供給力を確保する
のに相当苦労しており、2022年夏の供給についても需給が
逼迫することをこの段階で予知していたことがわかります。
理由としては東日本大震災以降原発が稼働しなくなったこと
をまず筆頭いあげていますが、それ以外にも火力発電所の
休廃止が相次ぎ、供給力に余裕がないことをあげており、
原発が動かない中で積極的で効果的な代替策をなんら構築
できていないことが見えてきます。夏で酷暑がやってくる
と電力不足が顕在化するというのは国民の殆どが予想できる
ものですが、実はこの国は冬が来ても電力が逼迫する
電力リスク国なのです。電力不足の問題はロシアがウクライナ
に侵攻する遥か前から浮上していた問題でエネルギー政策
が国民の命を守る重要な課題であると認識されているなら
足もとの軍事費の増強だ憲法改正だという凄まじく乱暴な
議論が全面に浮上する前に根本的な安全保障の問題として
議論されなければならなかったことがよくわかりますが、
何もしない無為無策の岸田政権はお得意の検討すらせずに
足もとでいよいよ猛暑が襲ってくる段階でいきなり国民
に不思議な節電ポイント制度を絡めながら国民に節電の
理解を求めようとしています。
■原油価格の高騰と円安の急伸で燃料代は高騰
原油高や天然ガス高は確かにロシアが絡む問題ではあります
が、それもウクライナ侵攻だけが問題なのではなく米国バイ
デン政権が主導する形で世界中に広がりをみせた地球温暖化
防止のための脱炭素の動きが深く関わっており脱石油といった
動きは結果的にグリーンフレーションという形で価格高騰を
招いている状況です。こちらも世界的な状況の把握能力が
あればいち早く対策を取るべきものであることが見えてきます。
またエネルギー輸入に依存する電力やガスの業界は原料自体
が高騰しても為替が円安に振れてもいつでもなんの躊躇もなく
顧客に価格転嫁できると高を括っている節があり、本邦の
輸出勢が精密に為替予約を行うといったことをしない習慣が
あるのも電気代の高騰にダイレクトに影響を及ぼしている
状況です。さらに菅政権は円高は総合的にみて経済にプラス
というとんでもない思考を継続中で、年初から20%近く上昇
したドル円価格はそっくりそのまま国民負担に付け替えられ
ようとしています。
■大停電で死ぬか超高額電気代で滅びるかのサドンデス状態
この夏の電力逼迫問題はまず需給が逼迫して大停電などの
不測の事態を引き起こすリスクがありますが、電気料金の
高騰はそれとは全く関係ない要因を引きずっていることが
ご理解いただけると思います。この視点で考えますと
節電したらポイントが貰えるというのは需給逼迫の解消
には貢献するのでしょうが価格高騰という本質的物価高
とはなんの関係もなく、とてつもない印象操作のインチキ
プロモーションであることが理解できます。またこうした
状況の火に油を注ぐことになっているのが電力自由化の
大失敗の問題です。既存の電力各社は確かに独占的に
電力事業を行ってきたことからこれに起因する問題は
数多く示現することになりましたが、その一方で地域の
電力を安定的に供給してきたことも事実でした。
しかし電力の自由化の実施は競争環境を導入することで
市場をより活性化することが期待されたものの、既存の
電力会社は利益優先志向の発想から火力発電所など
保有コストのかかる発電施設の廃棄を進めており、夏の
需給ひっ迫が顕在化しても簡単に予備施設を稼働して
不測を補うことができなくなるという問題も引き起こして
います。
さらに自由化で新規参入した事業者は当初は電気代が
安くなることだけ顧客に訴求してきましたが、実は状況
次第で価格が暴騰することや供給事態ができなくなる
ことは全く注意喚起できていなかったことから今頃
になって価格暴騰と供給不能から使い物にならない事業者
まで登場する惨憺たる状況を露呈させています。
この夏は電力不足の大停電下の熱中症でくたばるか
はたまた暴騰料金で滅びるかの選択を国民は迫られる
ことになりそうで、電力ポイントなど焼け石に水以前の
問題に陥っている状況です。
■原発再稼働の絶好のチャンスに使われている可能性も
資源エネルギー庁の資料を見ているとつくづく感じること
ですが11年前の東日本大震災で原発が稼働できなくなった
ことが節々に電力不足の根本的原因であるかのいうな雰囲気
が醸成されていますが、自民党もこれ幸いとばかりある
設備は利用すべきという発想から原発の再稼働を強く進める
構えを見せています。しかし原発の問題が起きたのはすでに
11年前の話ですから電力不足が顕在化することでいまさら
原発が動かないせいであるというのはあまりにも稚拙な発想
でグリーンエネルギーの利用を含めてもっと前倒しで電力
の安定的供給を実現することで国民への安全保障を履行
すべきものであることを強く感じさせられます。
国民としてはこの夏は涼しい山の中にでもこもるか南半球に
一か月旅行する、北極探検に出かけるなど究極の選択を迫られ
ることになりそうですが、慢性的に可処分所得も少なくどこ
にも出かけられない向きはどうやって命を奪われずに夏を
乗り切るかが最大の問題になりそうな雰囲気になってきました。
絶望的な夏はいよいよ週末からはじまっています。
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