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週刊 Life is Beautiful 2022年6月7日号:中学生にも分かるWeb3、ICO、ICOブーム、IEO

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 中学生にも分かるWeb3-3(メルマガ限定) ICO、ICOブーム、スピンドル事件、IEO ここまで Web3 の素晴らしい面ばかり書いて来ましたが、業界そのものが未熟な上に、暗号通貨というお金を扱う技術でもあるため、詐欺まがいの行動が横行しているので要注意です。 典型的なのが、2017年〜2018年に起こった ICO ブームです。ICO とは Initial Coin Offering の略で、株式の上場(IPO: Initial Public Offering)にイメージが似ているために作られた造語で、新しい暗号通貨が暗号通貨の取引所で取引できるようになることを示します。 Satoshi Nakamoto が発明したブロックチェーンは、どの国にも・企業にも支配されない通貨である暗号通貨を人類にもたらしました。Bitcoin や Ethereum はその代表的な例で、実際にそれらは、さまざまなイノベーションを生み出そうとしています。 その勢いに乗じて、自分たち独自の暗号通貨を発行する人たちがたくさん現れました。そんな人たちは、その暗号通貨でどんなことをやろうとしているかを記述したWhite Paper(白書)を発表し、「(取引所への)上場前の暗号通貨を安く買える」という甘い言葉で、大勢の人たちから大量のお金を集めました。ICOブームです。 しかし、そうやって発行された暗号通貨は、上場後にまともな値段がつかず、大半の投資家は大損をすることになりました。ICOによりお金を集めた人たちの大半は、White Paper に書いたことを全く実行せず、集めたお金だけをもってどこかに行ってしまいました。後から考えてみれば、ICOの99%は詐欺、もしくは、「詐欺に限りなく近い無責任な資金集め」だったのです。 典型的なのは、歌手のガクトが金融ビジネスで前科を持つ人(宇田修一)と組んで売り出したスピンドルという暗号通貨です。ガクトが広告塔となり、ファンを集めたイベントで、スピンドルへの投資がいかに儲かるかを熱く語ってお金を集め、スピンドルを取引所に上場だけさせながらも、White Paper に書いてあったようなことは何もせず、投資家たちに200億円もの損をさせた事件です(詳しくは「ガクトとスピンドル事件」参照)。あの頃は金融庁も暗号通貨市場で何が起こっているかを把握できておらず、多くの被害者が泣き寝入りする状況になってしまいました。 こんな事件が多発したために、ICOのイメージが悪くなり、今ではICOという言葉を使う人はほとんどいなくなりました。しかし、「独自の暗号通貨を発行して、それを上手に消費者に売ることが出来れば、まるで紙幣を印刷するように儲けることが出来る」という状況は変わっておらず、DeFi(暗号通貨を使った金融事業)やPlay2Earn(暗号通貨を活用した「遊んでいるだけでお金を儲けることが出来る」ゲーム)ビジネスにおいては、新しい通貨の発行は、暗号通貨ビジネスにおいて、重要な役割を果たしていると同時に、「暗号通貨ビジネスの多くはポンジスキームだ」と批判される原因にもなっています(ポンジスキーム問題に関しては、Play2Earn ビジネスの項目でさらに詳しく書きます)。 ちなみに、最近では、ICO が IEO (Initial Exchange Offering)と名を変えて復活しつつあるので注意が必要です。ICOとの違いは、ICOは上場前に発行元が直接消費者に直接暗号通貨を販売する仕組みだったのに対し、IEOは、暗号通貨の取引所が、新規の暗号通貨の販売の代理店の役割を果たす、という点に尽きます。 IEOの関係者(暗号通貨の発行元や、販売代理店の役割を果たす暗号通貨取引所)は、「IEOは暗号通貨取引所の審査が入っているので、ICOよりもずっと安全」と主張しますが、それは(自分たちのビジネスを成功させようとする)ポジション・トークでしかなく、上場後にその暗号通貨にちゃんと価値が付くかどうかは、暗号通貨の発行元次第なのです。 IEOは確かに、取引所の審査により、「お金だけ集めて、上場もせずにどこかに行ってしまう詐欺師」たちは排除できるでしょうが、それ以外の「詐欺に限りなく近い無責任な資金集め」を排除するシステムにはなっていなので、非常にリスクの高い投資だと理解してください。 ちなみに、暗号通貨に限った話ではありませんが、「簡単にお金儲けが出来る」話のほとんど全ては詐欺、もしくは、「詐欺に限りなく近い行為」だということを、社会で生きていく上での知識として持っておくことはとても大切です。たとえ有名なインフルエンサーや友達から勧められたとしても、まずは「頭から疑ってかかる」ことをお勧めします。 上手に設計された詐欺は、詐欺の被害者たちが、自らが喜んで詐欺に加担して他人に勧めてしまうように設計されています。あなたにNFTや暗号通貨を勧めるインフルエンサーや友達も、そんな詐欺の設計者の術中にハマっている可能性がとても大きいのです。 NFTとデジタルアート NFTとは Non Fungible Token の略で、日本語に置き換えると「代替不可能なトークン」ですが、それではさっぱり何言っているか分かりません。 NFTのルーツは、簡単にコピーできてしまうデジタル・アーツに「コピーも偽造も出来ない所有権」のようなものを作ることにより、アーティストに新たな収入の道を開けないか、という発想にあります。

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