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週刊 Life is Beautiful 2022年5月31日号:中学生にも分かるWeb3、マイニング、スマートコントラクト

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 中学生にも分かるWeb3-2(メルマガ限定) マイニング、電力消費問題、ガス代 ブロックチェーンの説明のところで、ブロックチェーンは以下のような仕組みで動いていると説明しました。分散台帳は、一連の変化(口座間のお金の移動)を記録したブロックをチェーン状に繋げた構造をしている新たなブロックをチェーンに繋げるには、膨大な計算資源(計算能力x時間)が必要それぞれのマシンには、提供した計算資源に応じたご褒美が提供される この「提供した計算資源に応じたご褒美が提供される」という部分が、私が「ノーベル経済学賞に値する」とまで高く評価する Satoshi Nakamoto の偉大な発明なのです。 通常の電子台帳(銀行の場合だと、全預金者の口座情報を電子的に記録した台帳)は、コンピューター上のデータベース(さまざまなデータを格納しておく仕組み)に格納されています。銀行のATMマシンは、すべてこのデータベースと繋がっており、それを利用して、現金の引き出しや預け入れが出来る仕組みになっています。 例えば、10万円の残高がある口座から1万円を引き出す場合、ATMマシンは、まずはデータベースにその口座に1万円以上の残高があることを確認し、データベースに残高を9万円に減らすように指示をした上で、1万円の現金を渡すように作られています。 基本的に、一つの銀行にはデータベースは1つしかないので(合併の結果、複数のデータベースを持つケースはありますが、それは例外と考えて結構です)、この「1万円の現金を口座から引き出す」という処理をする間は、ATMマシンとデータベースはリアルタイムで繋がっている必要があります。 そのため、データベースに少しでも問題が起こると、全ての処理が滞ってしまいます。みずほ銀行がしばしば起こしている「システム障害」は、その良い例です。電子台帳が一つのデータベースに集中管理されているから故の弱点です。 従来型の電子台帳のもう一つの特徴は、その台帳が特定の企業にコントロールされている、という点です。みずほ銀行に預けたお金の情報は、みずほ銀行が管理する電子台帳に格納されているため、みずほ銀行が倒産してしまったり、みずほ銀行のシステムが復旧不可能なほどの障害を起こしてしまうと、預金を引き出せなくなってしまうのです(倒産のケースでは、ある程度の額までは保証する仕組みにはなっています)。 Satoshi Nakamotoがブロックチェーンで可能にしたのは、分散していて、かつ、誰にもコントロールされていない分散台帳なのです。 それを可能にするために、Satoshi Nakamoto が導入したのが、「提供した計算資源に応じたご褒美(ビットコイン)が提供される」という仕組みなのです。ブロックチェーンに新たなブロックを追加する処理を、わざわざ莫大な計算量が必要なものにし、かつ、そこに「ご褒美」を提供することにより、多くの人が競い合って計算資源を提供し、それが結果として、(システム全体を管理している人がいないにも関わらず)悪意を持った人がデータを改竄(かいざん)することを不可能にしてしまったのです。 1000人で担がないと重くて運べない「御神輿(おみこし)」を想像してみて下さい。悪い人たちが10人や20人入ったところで、彼らの思い通りに御神輿を動かすことは出来ません。あまりにも重いために、「大多数の人たちが動かしたいと思う方向」にしか動かないのです。600人の人を雇えば好きな方向に動かせるようになりますが、それでは人件費がかかりすぎるので割りにあいません。 ブロックチェーンに新たなブロックを追加する際に必要な計算は、数学的にとても複雑なのでここでは割愛しますが、かなり「運」に左右される計算で、(ご褒美がもらえる)「当たりクジ」を引き当てるためには、何回も同じような計算を繰り返す必要があります。 この行動は、ある意味で、「どこに金が埋まっているから知らずに、片っ端から掘ってみる行為」に似ているため、マイニング(採掘)と呼ばれるようになりました。マイニングを専門にするコンピュータのことをマイニング・マシン、マイニングにより収益を上げようとしている人のことをマイナー(採掘者)と呼ぶのはそれが理由です。 マイナーたちが、ご褒美をもらうために一生懸命に計算することによって、成り立っているシステムのことを PoW (Proof of Work)システムと呼びます。皆が一生懸命に計算する(働く=御神輿を担ぐ)ことにより、システムが安定して運営出来るからです。 それぞれの参加者が「自分の利益を最大化しよう」と欲望のままに行動するにも関わらず、全体として良い方向に向かうシステムの設計は簡単ではありませんが、Satoshi Nakamoto はそんなシステムを見事に実現してしまったのです(ちなみに、この分野の研究のことを「ゲーム理論」と呼び、最近では「ゲーム理論の」研究者がノーベル経済学賞を受けるケースが増えています)。

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