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【Vol.422】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナと中国』

冷泉彰彦のプリンストン通信
      ウクライナ情勢と中国の政局を考える (前略)  ここからは、推測になりますが、中国が仲介を行うかどうかという1点に 集中して、その可能性を検討してみたいと思います。結論から言えば、「月 内に中国が和平仲介を行う」という予測をしてみたいと思います。外れるか もしれませんが、外れた場合には、どうして成立しなかったのかを考えて先 に進むしかありません。ですが、現時点では敢えて「2022年3月の月内 に中国が仲介」というシナリオを描いてみたいと思います。  それでは、「中国が和平を欲する経済的な理由」「中国政局との関係」 「現実的なシナリオ」の3つに分けて考察して参ります。  まず中国が和平を欲する理由ですが、中心となる理由は世界経済です。現 在の中国経済は、多くの産業、とりわけエレクトロニクスと自動車の関連を 中心に、全世界のほぼ全産業が取引相手となります。ということは、世界経 済の安定ということが、中国の経済の利害とほとんど一致することになりま す。  その中国は、今回の全国人民代表会議での李克強総理の演説によれば、次 年度の成長率5.5%を目標に掲げています。この5.5%ですが、日本など 自由陣営とは意味合いが違います。自由陣営におけるGDPというのは、勿 論政策的なターゲットはありますが、達成の主体は国家でもなければ政権で もありません。  官民合わせた自由な活動の結果がGDPであり、極論を言えばその目標値 が未達だからといって、それで総理がクビになるわけではありません。勿論、 経済が低迷すれば選挙で負けるわけですが、とにかく目標未達ということで 自動的に政権の信頼が失墜するわけではありません。  ですが、中国の場合はこの目標達成というのは重たい意味を持ちます。つ まりは、選挙で選ばれない共産党政権は、民意の洗礼を受けるチャンスがな いわけです。ですから、仮に「良くないこと」が起きたとしても、選挙に勝 って政治的パワーを挽回するという手段が使えません。勿論、政権は続くの ですが、GDPが未達になるようですと、政権への信頼は揺らぎます。その 結果として、漠然とした民意は不満を持つようになりますが、その不満は選 挙というストレートな形ではなく、政敵が活性化するという政争の形を取っ て出てくるのです。  ですから、この目標というのは政権が安定的に政治を運営するには、非常 に重要です。その上で、李首相はこの欄で既にご紹介したように、中国経済 には3つの困難があると指摘しています。具体的には、「コロナ禍、サプラ イチェーン、ウクライナ」の3つです。  中でもウクライナについては、このまま事態が長期泥沼化すると、次の3 つの問題がボディーブロウのように、中国経済を深く苦しめていくことにな ります。  1つは原油高、エネルギー高です。米国の制裁を非難することは簡単です が、中国にはこれをひっくり返してエネルギー価格を下げる政治的戦略があ るとは思えません。また、現在異常に露骨にロシアのエネルギーを輸入する というのも、全体的には無理があります。あまり露骨にやって米国が許容で きなくなると、国際分業がある臨界点を超えて破綻するからです。  ということは、やはりこのウクライナの問題が早期に解決して、エネルギ ーのコストが下がるということは、中国経済の5.5%成長を達成するには 必要であり、中国としてはそこに国益の相当な部分がかかっていると考えら れます。  2つ目は、穀物です。ウクライナは小麦(世界7位)、とうもろこし(世 界2位)などの生産高を誇り、世界の穀倉地帯の一角を占めています。現時 点では、ロシアは穀物関係のインフラは攻撃していませんが、このままです と、交通・輸送のインフラが動かないとか、夏の冬小麦の収穫、春小麦の種 まき(5月)などは不可能な状況になります。  中国はウクライナの穀物に大きな関心をはらって来ていますが、とにかく ウクライナの問題が長引いて、穀物市場が大きく値上がりするということは、 大口輸入国になっている現在の中国にとっては非常に厳しいことになります。 特にこれから春になっていく季節において、ウクライナの穀倉地帯が稼働で きるかは、中国にとって大きな影響があると考えられます。  3つ目は、対米貿易です。仮に中国がロシア政策に関して曖昧な態度を取 り続けるとなると、トランプ以来の米国との「貿易戦争」についての「ウィ ン=ウィン」の解決は難しくなります。経済ということでは、米国との関係 を再構築する必要はあり、米国側も中国が誠意を見せれば応じる可能性は大 きいと思います。  次に中国の政局との関係ですが、現時点では、李総理の演説がかなり厳し い現状への批判が入っていたとか、江沢民とコンビを組んでいた朱鎔基元首 相などが、習近平の「続投に難色」を示しているといった報道が飛び交って います。現状は秋の党大会を見据えつつ、いろいろな動きが出ているのだと 思います。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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