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高野孟のTHE JOURNAL Vol.526 2021.11.29
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1127》
日本政界を覆う「哲学の貧困」の深刻/例えば「デジタ
ル田園都市構想」の浅薄極まりなさ
【2】《CONFAB No.527》
閑中忙話(11月21日~27日)
【3】《FLASH No.437》
なぜ立憲民主党の代表選が盛り上がらないのか?/日刊
ゲンダイ11月25日付「永田町の裏を読む」から転載
【4】《SHASINKAN No.457》
■■ INSIDER No.1127 2021/11/29 ■■■■■■■■
日本政界を覆う「哲学の貧困」の深刻/例えば「デジタ
ル田園都市構想」の浅薄極まりなさ
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岸田文雄首相の旗印は「新しい資本主義」で、その中
核をなすのは「デジタル田園都市国家構想」であるらし
い。
「新しい資本主義」は、これまでの岸田の発言を見る
限り「成長と分配の好循環」を実現することで、そうだ
とすると「古い資本主義」とは、日本では、中曽根康弘
の国鉄・電電公社の民営化で始まって小泉純一郎=竹中
平蔵コンビの郵政民営化などによって全開させられ、そ
してアベノミクスにも引き継がれた、何でもかんでも規
制緩和、民営化、対外自由化で資本のやりたい放題を招
いた「新自由主義」ということになるだろう。
「新自由主義」によって荒廃した経済社会を修復する
のが「新資本主義」だと言われても、何のイメージも湧
かない。前者によっても一向に経済は成長せず、むしろ
経済の格差と社会の分裂が深まったのを反省して、今後
はもっと「分配」を重視するという程度のニュアンスし
か伝わってこない。
しかも、その「新資本主義」を実現する中核が「デジ
タル田園都市国家構想」だと言うのだが、これがまた、
大平正芳首相が1980年に打ち出した「田園都市国家構
想」とは似ても似つかない浅薄極まりないもので、それ
を象徴するのが「デジタル田園都市国家構想実現会議」
のメンバーに「新自由主義」の張本人である竹中平蔵=
慶應大学名誉教授がちゃっかり潜り込んでいるという事
実である。
●「成長と分配の好循環」とは?
成長と分配の好循環では、「分配の原資を稼ぎ出す
『成長』と次の成長につながる『分配』を同時に進める
ことが新しい資本主義を実現するためのカギ」だと、10
月26日の「新しい資本主義実現会議」第1回会合に経産
省が提出した資料が述べ、それを詳しく説明した図を提
示している(図1
https://bit.ly/3HVdQxX )。
成長の牽引力は科学技術とりわけデジタル新技術で、
地方の活性化もこれで行うことから「デジタル田園都市
国家構想」とも繋がる。これで投資や消費が増え、企業
の収益増、個人の所得増、国・自治体の歳入増になれば
「分厚い中間層の(再?)構築」が可能となり、次への
成長力が生まれるーーと、まあ、都合のいいことだらけ
の机上の空論で、問題の焦点である「どうしたらこの好
循環が動き出すのか」についてはこの図からは見えてこ
ない。
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