第12回 孤立を救う説明責任

前田安正の「マジ文アカデミー」
菅義偉首相が、総裁選への立候補を断念したというニュースが、3日午後に突然流れてきました。このメルマガは政治を語る趣旨ではありません。ただこの数年間、僕たちの生活感と政治家が発することばとの間にギャップを感じる場面が増えたような気がしていました。 着流し姿で理不尽に耐えて耐えて、やがて義理人情のはざまで仇討ちに行くという筋立ての任侠映画。鶴田浩二や高倉健が演じた主人公も無口でした。おしゃべりだった僕は、父から「男は三年三口だ」と言われたことがあります。ペラペラしゃべる男は信用されない、というのです。 戦後の高度成長期に企業戦士と言われた男たちは、理不尽に耐え身を粉にして働いたのでしょう。「男は黙って…」という、かつてのビールのコマーシャルがそれを象徴しているようにも思います。不言実行、黙って俺についてこい、背中で語る…そうした価値観はバブルの崩壊とともに薄らいでいきました。菅首相も、こうした時代を歩んできた一人です。口が重いのもある程度は理解できるのです。 僕が新聞社で働きたいと思った理由の一つには、こうした昭和の「男の世界」にロマンを感じたからでもあります。24時間仕事に拘束されることが、苦痛と思ったことはありませんでした。特段、休みが欲しいと思ったこともありませんでした。
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  • 前田安正の「マジ文アカデミー」
  • これからは「自らがメディアになる時代」です。就活・ビジネスなど、さまざまな場面で自己発信力が求められています。ところが、情報の受け手を意識して自らを表現することは、そう簡単ではありません。 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部/大和書房)の著者が、「自らがメディアになる」ための文章作法と「ことば」の可能性についてお伝えします。
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