【Vol.391】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「日本の政局、秋の陣にシナリオはあるのか?」  実務型内閣と見られていた菅政権ですが、ここへ来て各種調査の支持率は 30%ラインを割り込み既に危険水域に入ったと言えます。かなり厳しい状 況ですが、衆議院の任期切れが10月21日に迫る中で、菅総理は9月の自 民党総裁選に勝利して選挙に打って出る構えを崩していません。ですが、盆 明けの政局は不透明であり、何が起きるか分からないのが実情です。  コロナ対策、自然災害への対処など日本社会は喫緊の課題に直面しており、 本来であれば永田町の政局談義などをしている暇は全くないはずです。私も 強くそう思う一方で、既に現政権が求心力を失いつつある中では、政局を回 すことがかえって社会の前進に資することになる、そんな感覚もあります。 既にその臨界点は過ぎたのかもしれません。ですから、ここは、可能性のあ る選択肢を広げながら検討をしてみることにします。  まず、具体的な政治家の名前を取り上げる前に、前提となるファクターを 検討してみたいと思います。菅総理の人気急落の背景には、新型コロナ感染 拡大に関する疲労感と先行きの不透明感があるわけです。何はともあれ、こ れが大きな前提です。  更に、西村康稔大臣の「銀行に告げ口するぞ」とか、丸川珠代大臣の「観 光は自己責任」などの度重なる失言が自民党への不信感をかき立てているわ けです。極め付けは、菅総理の対話力欠如です。まるで「私には有権者に対 して本当のことを言う権利も義務も能力もありません」と言う顔で喋る、そ して、いつどんな時も同じように喋るというのは問題だと思います。誰だっ て怒るのは当たり前です。  私は加藤勝信氏のような「組織防衛の大喜利」が嫌いで、菅さんはもう少 し「まし」に喋れると思っていました。東京新聞の望月記者との「ボケとツ ッコミ」を見ていた頃は、アドリブも行けると思っていたのですが、総理に なってみると全くダメでした。とにかく、あのトークではダメです。それに 対する有権者のここまでの怒りというのは歴史上珍しく、このトレンドは簡 単には逆転しないでしょう。  こうした有権者の反発感情は、実は菅総理と自民党に向かっているだけで はないようです。例えば国政に転じて総理総裁にという待望論のある小池百 合子東京都知事は、ここへ来て東京の感染爆発と医療崩壊の中で支持を下げ つつあると思います。数字で出ているのではないのですが、かなり厳しい状 況だと思います。コロナ禍に関するトークということでは、小池氏の切れ味 も鈍くなってきました。  小池知事にはコロナ禍に加えて、五輪チケット代金の返金問題を含む五輪 の負債も重くのしかかっています。これは行くも地獄、帰るも地獄という感 じです。つまり、コロナと五輪で傷んだ都の財政を更に悪化させるような格 好で返金しても、また返金を断念しても、国に負担を押し付けても批判は免 れないでしょう。とにかく、900億円(推定)というキャッシュをどこか から引っ張って来なくてはならない、しかも後ろ向きの債務というのはキツ い話です。  そんな中で、野党第一党の立憲民主党の人気も低迷しているようです。ワ クチン接種に積極的でなく、行動変容で「ゼロコロナ」をなどと抽象論を掲 げていたツケは余りにも大きいと言えます。また、共産との接近も意味不明 です。一方で、今春大阪で医療崩壊を起こして批判を浴びた維新は、東京が より深刻な事態に陥ったことで政治的にやや息を吹き返したとも言えます。 ただ、大阪も今度の波で再び厳しくなっているので、ドッコイドッコイでし ょうか。(続く)
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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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