第10回 並列することばと文章

前田安正の「マジ文アカデミー」
「ご不便をおかけしますが健康・感染を守るため…」 出先でこんな貼り紙を見かけた。これでは「感染を守る」ことになってしまう。 Twitterでこういう投稿を見かけました。 確かに。健康は守る。でも感染は、防がなくちゃいけない。 ことばを並べて書くと、往々にして一つのことばにだけ述語(述部)が掛かる傾向がある。上の例の場合は「健康・感染」と中黒(・)でつないでいるため、ワンワードとして捉えてしまったのかもしれません。そのため、「感染」より「健康」という意識が強く働いた「ことば」として認識され、「守る」という述語をつなげてしまったように思うのです。 「健康・感染」という部分を「健康や感染」という具合に、中黒(・)から「や」という並列の助詞に変えるとどうでしょう。 健康・感染を守る 健康や感染を防ぐ 中黒(・)の場合と異なり、受ける述語が「守る」から「防ぐ」に変化します。これは、「や」という助詞が入ったため「ワンワード」としての意識が薄らぐからです。そのため、後ろに置かれた「感染」ということばを受ける述語を強く引き寄せる傾向がでてくるのです。 「健康」と「感染」のことばを逆にするとどうなるでしょうか。 感染・健康を守る 感染や健康を守る それぞれが「守る」という述語を取って、一見すると文が成立しているように思えます。しかし、ことばを入れ替えたとしても「感染」ということばに付く述語がないままなのです。 やはり 感染を予防し、健康を守る というふうに、それぞれに合う述語を取らないと、文として落ち着かないですね。 実は、こうした文が結構多いのです。たとえば、
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