第9回 あいまいなことばの感覚

前田安正の「マジ文アカデミー」
お礼 7月15日発行の「特別編 勘違いから始まった辞書との付き合い」で『まぐまぐ!サマーアワード2021』にエントリーし、ノミネートの機会を得ることができました。8月4日に受賞記事の発表があり、残念ながら受賞は逃しました。発行して2カ月余りでの挑戦だったにも関わらず、多くの方に投票していただき、感謝申し上げます。これを機にさらに精進していきたいと思います。この場をお借りしてお礼申し上げます。                            「マジ文アカデミー」 前田安正 犬が西向きゃ尾は東。 当たり前すぎるほど当たり前のことをいうことわざだ。 ここで使われている「東」と「西」を説明できるだろうか? 手元の辞書をいくつか調べてみると、「東」は「方角の名。日の出る方向」、「西」は「方角の名。日の沈む方向」(『日本国語大辞典』ジャパンナレッジから)という説明が、ほとんどだ。「太陽の昇る方向」「太陽の沈む方向」などとする辞書もあるが、基本的には同じだ。 この説明に対して、「太陽の昇る方向といっても季節によってずれるじゃないか」という声もある。この声に応えたのかどうかは定かでないが『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)は「春分の日の朝、太陽の出る方向の称」と説明している。春分は昼と夜の長さがほぼ等しいので、他の時期より太陽の出る方向にブレが少ないということだろう。 東や西という方角は太陽を基準に説明しやすい。柿本人麻呂は万葉集のなかで ひむがし(東)の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ と歌った。これは、太陽が東から昇りはじめるころ、西の方向に月が傾いている様子を描いたものだ。 飛雄馬が見た、明け方の太陽と月 この明け方の光景は、漫画『巨人の星』のなかでも描かれる。初恋の相手・美奈が亡くなって自暴自棄になった主人公・星飛雄馬が、明け方に見た太陽と月。
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