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【Vol.386】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「どうにも不自然な飲食店脅迫事件」  西村康稔経済財政・再生大臣(何とも奇妙な肩書きですが)は7月8日夜 の記者会見で、「休業要請に応じない飲食店の情報を金融機関に提供する」 という考えを明らかにしました。要するに、政府が飲食業界に対して法的な 根拠もなければ、世論の支持もない「脅迫行為」を行なったということです。  つまり、緊急事態宣言下でも、酒類を出すにもかかわらず休業しない店に ついては、銀行から融資ストップなどの圧力を加えて欲しいということのよ うです。しかしながら、そもそも宣言を無視して酒類を提供する店というの は、ボロ儲けをしようというのではなく、休業したら家賃や人件費などで潰 れてしまうので、仕方なしに営業するという店が多いと考えられます。  ということは、銀行としたら「あの店は違反しているから融資を止める」 などという行動に出た場合には、最悪の場合にその店は倒産してしまいます。 店が倒産したら、融資は回収できないので「事故」つまり銀行としては損失 になります。ですから、銀行としては苦境に立っている店について、最後に 首を絞めるようなことをしたら、自分の首が締まってしまいます。  いやいや、東京の場合は、大手銀行が多いから大丈夫、そんな発想を西村 大臣がしていたとしたら大間違いです。零細な飲食店の場合は、都内でも地 銀や第二地銀、信金、信組といった金融機関が取引先です。西村大臣は、要 するに彼らに飲食店を追い詰めよと言っているのです。その無謀性、非人道 性以前の問題として、経済ということを全く知らない発想として言いようが ありません。  これに加えて、西村大臣は酒類を販売する事業者にも要請に応じない飲食 店と取引しないよう求めたようです。と言いますか「ようです」などという レベルではなく、ちゃんと酒税徴収の監督官庁である国税庁から「圧力文 書」が公式に発せられているのですから驚愕(現時点では取り下げたようで すが)です。  こちらも酒屋、酒問屋の苦境を理解しないで、横暴な権力を振りかざして いるのですから始末が悪いと言えます。  この2つの「事件」ですが、どうにも不自然です。  とにかく、冷酷なイメージの西村氏にしては余りに稚拙だからです。です から、「うがった」見方をするのであれば、経産省出身の西村氏を「罠には める」ための金融庁系のアクションという説明は可能です。想像を逞しくす るのであれば、ポスト菅に向けて、「2F派による小池マジック」戦略とい うのは、もしかすると清和会潰しであって、具体的には安倍潰しであり、ま ずは安倍直系の西村大臣が狙われたという可能性があるかもしれません。  もっと言えば、自公の衆院議員の多くは「このままで選挙が戦えない」と いう理由から、「総選挙は小池で」という計算を始めているかもしれないの です。菅総理は、基本的には自分で解散して続投する構えですが、場合によ ってはフルの総裁選を9月にやって結果として小池に禅譲するという可能性 もあるのではないでしょうか。  一方で、そんな「西村潰しから安倍潰しへ」などという複雑な話ではなく、 内閣官房も絡んだ「統治アマチュア」を露呈した壮大なオウンゴールという ように、素直に見ておく必要もあるかもしれません。ただ、これも常識的に 考えて、かなり無理筋です。いくら「宣言の実効性を担保」できるかどう 「かしら?」と小池百合子にチャレンジされたからといって、ここまでの自 爆行為に追い詰められるというのは、非常に不自然だからです。  やはり、清和会と2F派の暗闘、10月総選挙への党内の異常な危機感、 そしてもしかして菅総理の続投意欲が「枯れてきている可能性」などを勘案 すると、水面下における暗闘はかなりのレベルになっており、その結果とし て西村氏は「罠にはまった」という見方が一番自然であるように思います。
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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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