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週刊 Life is Beautiful 2021年6月29日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん TMSC 6月になって経済産業省が「半導体戦略」を発表しました。デジタル技術があらゆる産業の基盤になろうとしている今、日本が半導体のシェアを落とし続けている状況をなんとか打開しようという戦略です。 その戦略のコアに置かれているのが、「海外ファウンドリの誘致」で、それがシェアNo.1である台湾のTSMC(台湾セミコン)を指すことは明確です(ファウンドリとは、半導体の委託製造を行うビジネスのこと)。 経産省がこの戦略を発表するとほぼ同時に、日経新聞が「日本に半導体工場、TSMCが検討」というリーク記事を掲載しましたが、この記事によると、TSMCは日本政府から先進的な半導体を日本で生産するよう要請を受けているそうです。 下のグラフは、各ファウンドリのシェアを四半期ごとに示したものですが、TSMCとSamsungの二強がさらにシェアを伸ばしつつあり(それぞれ56%と18%)、寡占化が進んでいることが良く分かります(参照:Leading semiconductor foundries revenue share worldwide from 2019 to 2021, by quarter)。 技術力では、この2社が他を圧倒していますが、Samsung は家電やスマートフォンも作っているメーカーでもあることを考えると、誘致する相手としては、TSMC一択になるのです。 TSMCには中華リスク(台湾が中国の一部になってしまう可能性)があるため、工場を国内に誘致することは、安全保障上の観点からも理にかなっているのです。 半導体工場の建設には、莫大なコスト(数千億円)がかかりますが、今の日本政府とTSMCの力関係を考えれば、大半のリスクは日本政府側が負うことになるだろうと思います。 半導体工場は大量の水を必要とし、当然ながら、排水の量も莫大になるため、その手配も日本側がする必要があります。日本は水資源は豊富ですが、排水の処理施設は新たに作る必要があるので、そのコストも馬鹿になりません。 ちなみに、TSMCは、台湾政府の国策によって1987年に作られた企業です。当時、台湾の Minister of Economic Affairs(経済大臣)だったSun Yun-suan(孫運璿)氏が、台湾の技術力を底上げするための非営利組織としてIndustrial Technology Research Institute(工業技術研究所)を設立し、そこに、Texas Instrument で半導体ビジネスを担当していたMorris Chang(張忠謀)氏を会長兼社長として引き抜き、その後は Chang 氏が TSMC の設立と経営を担いました(Morris Chang氏は、2018年まで TSMC のCEOを勤めました)。 TSMCの設立は、台湾政府とオランダのPhilips との合弁会社として作られました。Philipsは、日本のソニーのような会社ですが、当時は半導体の生産も行なっており、生産技術の移転も行われました。 TSMCが画期的だったのは、当時存在しなかった「半導体の製造のみを行う企業=ファウンドリ」として立ち上げ、当時、徐々に存在感を増していたファブレスな半導体メーカー(半導体の設計のみを行い、製造は他社に委託する企業)のニーズに応えることに特化した点です。

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