■消耗せず、生産性が高い働き方
コロナ禍で、日本でも多くの会社員が長期間の在宅勤務を経験した。
これに対しては、良い面、悪い面の両面がある。だが、テレワーク
に関する議論はすぐに下火になってしまった。
その後、変異株が見つかって、感染者が増えているのに早朝の通勤
電車は混雑していた。技術的に可能なのに、出社を求められている
会社員も少なくない。
日本企業の多くは「テレワークはあくまでも例外」と考えているよ
うだ。だが、ドイツでは、通常の業務形態の一部になりつつある。
多くの企業がコロナ終息後も、勤務態勢の一部にしようとしている。
以前は、ドイツでも日本と同様、毎日出社して働くのが常識だった。
しかし、2020年春のコロナ禍勃発以降、テレワーク大国への道を歩
みつつある。
日本では「製造業にはテレワークの導入は不可能」という意見が強
い。だが、ドイツでは製造業も含めてデジタル化を目指し、より多
くの人がテレワークできるように経済を変えようとしている。
これまでもドイツは世界で最もワークライフバランスが高い国だっ
た。だが、通勤時間がゼロになり、働く時間を自分で決めることで、
家族と過ごす時間が増え、生活の質はさらに高まりつつある。
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ドイツもかつては「テレワーク小国」だった。他のEU加盟国と比
較しても、ドイツはテレワークが進んでいなかった。ドイツが物づ
くり大国であることも、理由の一つだ。
ドイツ企業もコロナ禍までは、社員の大部分を自宅で働かせたこと
はなかった。だから、経営者たちは業務が滞るのを防ぐため、極め
て短期間にITのキャパシティーを拡充しなければならなかった。
2020年3~4月に多くの企業のIT担当者たちが突貫作業を行い、
大半の社員がテレワークできる態勢を短期間で作り上げた。大企業
を中心に、デジタル署名や電子スタンプも浸透した。
おかげで、製造業や店頭での小売業などを除く多くの企業では、大
多数の社員が出社しなくても売上高や生産性を維持できるようにな
った。業務にも大きな支障は出なかった。
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それどころか「テレワークの方がオフィスで働くより生産性が高い」
と答えた人も少なくない。ドイツの公的健康保険の運営機関が公表
したアンケートでは、その比率が半数を超えていた。
BitKomの調査でも、回答者の過半数(57%)が「テレワークの方が
生産性が高い」と答えている。これは「生産性が低い」と答えた人
の比率(9%)を大きく上回っている。
多くのドイツ企業の経営者と社員たちは、2020年春のコロナ・パン
デミック第1波で、自宅からでもオフィスにいるのと同じように業
務を続けられることを学んだのだ。
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日独間のテレワークの普及度に大きな差をつけたのは、社員の健康
に対する考え方の違いだ。ドイツの雇用者は、従業員に対する「保
護義務」を負わされている。
雇用者は、労働安全法、労働時間法、母親保護法、差別禁止法など
様々な法律で従業員の健康と安全を最優先にするよう義務付けられ
ている。違反した管理職は、厳しく批判され、最悪降格させられる。
ドイツ企業が年配社員や、家庭に基礎疾患を持つ人がいる社員に出
社を強制せず、日本より寛容にテレワークを許可するのも、企業が
法律の縛りで、個人を尊重することを義務付けられているからだ。
社員の都合と企業の要請の間のバランスをうまく取るのが、管理職
の役割の1つだ。個人主義社会でない日本では、上司からの無言の
圧力を跳ね返して自分の都合を優先するのは並大抵ではない。
これに対し、ドイツでは暗に出社を強制するような無言の圧力は、
日本より少ない。社員の都合を尊重すべきというドイツ社会の性格
も、テレワークが日本よりも幅広く普及した理由の1つなのだ。
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