[高野孟のTHE JOURNAL:Vol.493]トリチウム汚染水はまず東京湾に放出すべき

高野孟のTHE JOURNAL
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 高野孟のTHE JOURNAL Vol.493 2021.4.12                  ※毎週月曜日発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 《目次》 【1】《INSIDER No.1094》    トリチウム汚染水はまず東京湾に放出すべき    ーー“復興五輪”と言いながら福島県民を踏みつ    ける菅の酷薄 【2】《CONFAB No.493》    閑中忙話(4月4日~10日) 【3】《FLASH No.403》    尾池和夫教授の「南鳥島を放射性廃棄物の処分場    に」提言ーー日本で唯一の期待できる選択か 【4】《FLASH No.404》    コロナ禍が教えた「生き物らしさ」ーー9条連    ニュース3月30日号「巻頭言」から転   載 【5】《FLASH No.405》    詭弁と時代錯誤の「伝家の宝刀」ーー9条連ニュ    ース3月30日号「政治展望台」から転載 【6】《FLASH No.406》    「完成の可能性は低い」辺野古にいつまでしがみ    つくのかーー日刊ゲンダイ4月8日付「永田町の    裏を読む」から転載 ■■ INSIDER No.1094 2021/04/12 ■■■■■■■■■ トリチウム汚染水はまず東京湾に放出すべき ーー“復興五輪”と言いながら福島県民を踏みつける菅    政権の酷薄 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■  何もこんな時期に、福島第一原発事故の結果として溜 まり込んできたトリチウム汚染水の海洋放出を決定しな くてもいいだろうにと誰もが思うけれども、菅義偉政権 にとってはそうではない。そもそも2020東京五輪は、安 倍晋三前首相が2013年9月のブエノスアイレス IOC総会 で「福島の原発事故は完全にコントロール下にある」と 世紀の大嘘をついて誘致したもので、それと辻褄を合わ せるためにはどうしても五輪前に汚染水についての方針 だけは決めておかなければならなかった。  だってそうでしょう。仮に五輪が開催さ世界中から記 者が集まってくれば、必ず「そう言えばあの時安倍さん はアンダー・コントロールと見栄を切ったが、いま福島 事故跡はどうなっているのか」と質問が飛ぶに決まって いる。その時に「いや、実は、トリチウム汚染水の処分 方法がまだ決めっていなくて……」とは答えられないだ ろう。  それにしても、“復興五輪”などとリップサービスを 繰り出しておきながら何の対策を打つわけでもなく、今 になって「やっぱり海洋放出するので我慢しろ」と福島 の漁民はじめ県民を思い切り踏みつけるかのような所業 に出るというこの酷薄さは一体どうだろうか。  もちろん政府は、トリチウムがいかに健康被害とは無 縁であるかについて熱弁を振るうだろう。いや、本当に そうかという科学者の異論があると反論すれば、トリチ ウムは自然界に存在しているし、日本に限らず世界中の 原発ではこれまでも海か大気中に放出してきて何の問題 も引き起こしてこなかったと強弁するだろう。しかしそ んなのは屁理屈で、福島の漁民を追い詰めてきたのはい かなる理屈をも超えた風評被害なのだ。この10年間、さ んざん風評被害に苦しみ、岸壁から這いずり上がるよう にしてようやく普通の操業ができるようになるところま で漕ぎ着けたばかりの漁民たちにとって、海洋放出はも う一度岸壁から蹴り落とされるに等しい仕打ちとなるこ とが、どうして菅には理解できなのか。  もし本当にトリチウムがそれほど安全なのであれば、 首相官邸の前庭に象徴的な汚染水タンクを置いて、その 水で水道を賄ってみせたらどうなのか。それは極端だと しても、どうしても海洋放出しなければならないのであ れば、東京湾から始めて、全国の海岸に広げて行ったら どうだろうか。しかし、福島の海にだけは流してはいけ ない。沖縄の米軍基地を本土各地に分散させ、沖縄はこ れまで苦しんだ分、これからは1つも置かないという論 理と同じく、苦しみは皆で引き受けて福島の人々にはこ れ以上辛いことを押し付けないようにしたい。 ●相変わらず根本的な解決を回避
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