週刊 Life is Beautiful 2021年3月30日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん ARK Invest 米国株のニュースを読む人は目にしたことがあると思いますが、最近 ARK Invest という投資会社のCatherine Woodという女性 CEO が注目を集めています(参照:Who Is Cathie Wood? The Untold Story)。 ARK Invest が運営する Active ETF(ダウなどのインデックスに連動させるのではなく、個別銘柄を選んで投資するETFのこと)がことごとく各種インデックスを大きく上回る成績あげているためで、最近投資を始めた Robinhooder たち(Robinhood というアプリを使って株を売買する人たち)には大人気です。 彼女は、以前から "Tesla Bull" (Tesla 株に対して強気な意見を持つ人のこと)として知られており、Tesla の株が(分割前に)200ドル前後だったころ(2018年)に、「5年後に4000ドル(分割後の800ドル)になる」と予言し、それが見事に的中したことで、一躍注目を集めました。 彼女の投資スタイルは、技術の進歩によって「飛躍的な成長」が見込まれる分野(電気自動車、バイオ、人工知能など)をいくつか選び出した上で、そこで「勝ち組」になるだろう企業を選び出して投資するというもので、基本的に私の投資方針ととても良く似ています。 「世の中の流れ」のようなものは読まず、純粋にキャッシュを生み出す力や、そこから導かれる「適切な価格」との乖離だけを見て投資する(投資の神様と崇められる) Warren Buffet とは対照的な投資スタイルであり、それも注目を集める理由の一つです。 先週、その ARK Invest が Tesla に関して最新の情報を発表しました。詳しくは、そのレポートそのもの(ARK’s Price Target for Tesla in 2025)を見ていただくのが一番ですが、要点をまとめると、「2025年の Tesla の株価は、最悪のシナリオ(Bear Case)で $1,500、最高のシナリオ(Bull Case)だと $4,000 」というものです。この情報を発信した時点の Tesla の株価は $650 前後だったので、少なくとも倍以上にはなるという強気な予想です。 興味深いのは、その数字に至る理由付けの部分です。出荷台数に関しては、2025年時点で年間500万台から1000万台(売り上げだと $234 billion から $367 billion)と予想しており、これは十分に達成可能な数字だと私は思います(ちなみにトヨタ自動車の売り上げが、約 300 billion)。 しかし、Bull Case の方には、ロボットタクシーによる売り上げが $327 billion と予想されており、これはあまりにも現実離れした数字です。先週のメルマガに書いた通り、レベル4の無人運転を実現するためには、技術面と法律面でまだまだクリアしなければならないことがあります。たとえ2025年の時点でそれが実現していたとしても、そこからこのレポートに書いてあるような収入(年間 $327 billion)を上げる可能性は、ものすごく低いと私は見ています。 逆に、ARKのレポートに欠けているのが、自動運転ソフトウェアの月額課金からの売り上げで、私はそれが2025年ごろには年間 $10〜$20 billion に成長しており、それが利益率の高さ(80%以上)と持続性により、企業価値を大きく引き上げるだろうと見ています。 同じく月額課金ビジネスである Slack の株価総額($23.7 billion)は、年間売り上げ($ 1 billion 弱)の約25倍あることを考えれば(ちなみに、Zoomの場合は38倍)、それと同じような評価(つまり $250〜$500 billion)がついても良いはずです。 同じようなことは、自動車保険に関しても言えますが、なぜか ARK は Bear Case ばかりにそれを計上しており、ロボタクシーの時代になれば、個人が自動車を持たない時代になると予想しているようです。 また、テスラのエネルギービジネスに関して全く触れていないのも不思議です。Tesla の Power Wall は家庭用の蓄電池としてデファクト・スタンダードになる可能性は十分にあり、それを活用したバーチャル電力会社のポテンシャルは自動車ビジネス以上のものです。 ARK Invest は素晴らしい会社だと思うし、Catherine Wood も尊敬していますが、今回のレポートに関しては、正直同意出来ない部分がいくつかあります。 私がアナリストであれば、Bear Case は ARK と同じような予想すると思いますが、Bull Case に関しては、ロボタクシーではなく、自動運転ソフトウェアの月額課金ビジネスとバーチャル電力ビジネスで稼ぐシナリオを描きます。
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