週刊 Life is Beautiful 2021年3月9日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 蓄電テクノロジー 先週、Tesla のバーチャル電力ビジネスの話を書きましたが、その背景には、世界は、ここから20〜30年の間に再生可能エネルギーに大きくシフトするその実現のためには、巨大な蓄電設備が必要である という、私なりの「読み」があります。 細かな事象に関して未来を予想すること(例えば、「Tesla のバーチャル電力ビジネス」が大成功を納めるかどうか)は非常に困難ですが、このような「大きな流れ」を読むことはそれほど難しくありません。 太陽光や風力を利用した再生可能エネルギーは「自然まかせ」であるため、需要と供給の間にどうしてもギャップが生じてしまいます。特に太陽光発電は、比較的需要の低い日中に電力を生み出し、需要が高くなる夕方から夜にかけては電力を生み出さないため、そこに大きなギャップが生じてしまいます。 電力業界では、太陽光発電による需給の差をグラフ化したものを、「かも」のような形を持つことから「Duck Curve」と読んでいます(参照:The Duck Curve: What is it and what does it mean?)。下の図は、そのギャップが毎年大きくなっている(お腹の部分が膨らんでいる)ことを、とても分かりやすく示しています。 再生可能エネルギーを使った発電コストは順調に下がっており、既に火力や原発を下回るようになっていますが、この「Duck Curve問題」を解決しない限り、50%置き換えることすら不可能なのです。 そんな背景もあり、蓄電技術に関する記事を目にするたびに丁寧に読んで来たのですが、頭の整理をする上でも、一度、学んだことをまとめてみたいと思います。 この分野は、競争も激しく、電源網向けの蓄電技術に限っただけでも、以下のようなものがあります。揚水発電リチウムイオン電池フロー電池重力電池熱電池空気圧電池液化空気電池弾み車電池 揚水発電 陽水発電とは、電力が余った時に、ポンプで水を汲み上げて位置エネルギーとして貯めておき、電力の必要な時に(通常の水力発電と同じく)タービンを回して発電する方法です。 巨大な貯水池(ダム)を(上下両方に)作る場所が必要な上に、豊富な水が必須なので、どこでも使えるわけではありませんが、日本には、40ヶ所以上、総出力2,600万kWと世界最大規模の揚水発電施設があるそうです(参照:Wikipedia)。ただし、どれも小規模(貯水池に貯められる水の量が少ない)ため、稼働率は3%しかないそうです。 揚水発電は昔からある「枯れた技術」ですが、再生可能エネルギーが作り出す需給ギャップをうめるためには、巨大な貯水池が必要で、残念ながら現実的ではありません。 リチウムイオン電池 リチウムイオン電池は、スマホ・パソコン・電気自動車などに使われている蓄電池です。ひと昔前までは値段が高すぎて電源網向けの蓄電池に使えるようなものではありませんでしたが、Tesla がギガファクトリーで電気自動車向けのリチウムイオン電池の大量生産を始めたことをきっかけに、大幅に値段が下がり、電源網向けの蓄電池として使うことが現実的になりました。 大規模な電源網向けの施設としては、2017年にオーストラリアの電力会社が Tesla 製のリチウムイオン電池で、100メガワットの施設を作ったことが良く知られています(Tesla mega-battery in Australia activated)。 この電力会社は、増えつつある再生可能エネルギーを活用した発電により、電源網が不安定化しはじめている(最悪の場合、大規模停電を起こしてしまう)という悩みを抱えており、その問題を解決するために導入したそうです。それまでは、需要と供給の間に大きなギャップが生じた時には、予備の火力発電施設で対処していたそうですが、停止している火力発電を立ち上げるには時間がかかり、急激な変化には耐えられないのだそうです。 この電力会社は、リチウムイオン電池は必要な時に瞬時に電源を供給出来るという理由で採用を決めたそうですが、導入後まもなく、実際に急激な需給バランスの悪化が生じ、それを Tesla 製のリチウムイオン電池(および、コントロールシステム)が瞬時に対応して、大規模停電を防いだそうです。 さらに、電力に余裕があるときや電力が安く購入出来る時に蓄電池に貯めておき、需要が供給を上回った時に使うことが出来るため、料金の高い時に他の電力会社から電力を購入する必要がなくなったため、それだけで莫大なお金の節約になっており、3年ほどで投資額が回収できてしまうそうです。
これはバックナンバーです
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