週刊 Life is Beautiful 2020年12月29日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん M1 のインパクト Apple が自社製チップ M1 を搭載した Mac を発売したことに関しては、パソコン業界全体に大きな影響を与えるだろうと書いて来ましたが、既にいくつかそれを証明する記事が書かれるようになったので紹介します。 M1 Mac mini catapulted Apple to number one in Japanese desktop PC market:日本のデスクトップ・パソコン市場において、Apple のシェアがこれまでの 15% から、一気に 27.1% に上昇して「もっとも売れているデスクトップ・パソコン」の地位に輝いたという記事です。 Tested: How badly Windows on Arm compares to the new Mac M1s:Microsoftは、インテルの64ビットプロセッサ向けに作られたアプリを、(ARMコアを持つQualcommのSnapDragonプロセッサを搭載した) Surface Pro X で走らせるためのエミュレータを発表しましたが、この記事によると、ベンチマーク(スピードテスト)の結果は惨憺たるものだったそうです。詳しくは記事の中にあるグラフを見てもらうのが一番ですが、パフォーマンスの差は「数倍」であり、まったく勝負になりません。原因はまだベータ版であるエミュレータにもあるとは思いますが、最も大きな違いはプロセッサにあります。 Microsoft Designing Its Own Chips for Servers, Surface PCs:Microsoft がクラウドサービスで使うサーバー向けに ARM コアを搭載した自社製プロセッサを開発している、という記事です。サーバーの場合、ランニングコストは基本的には電気代であり、プロセッサの消費電力あたりの性能はとても重要です。この動きは、Intel がその要求に答えられていない証明です。先週も書いたように、自社製プロセッサの開発には莫大なコストがかかりますが、一度設計が出来てしまえば、製造原価で入手出来るため、Microsoft のように巨大なデータセンターを持つ企業にとっては、合理的です。そのチップを Surface Pro などのノートパソコンにまで使うかどうかは現時点では不明ですが、可能性は十分にあると思います。 Where is the Qualcomm Snapdragon that will challenge Apple's M1 Macs?:12月の頭に開かれた「Snapdragon Tech Summit」において、Qualcomm からは Apple の M1 に対抗するプロセッサのアナウンスメントはなかったことを批判する記事ですが、Qualcommにとっては、パソコン市場はそれほどプライオリティが高くないので仕方がありません。Snapdragon は現在、スマートフォン市場のプロセッサの市場で No.1 の地位を占めていますが、Qualcomm としては、その地位を死守することが何よりも大切で、そのためにはAndroid スマホを作っているOEMメーカーに対して、魅力的なプロセッサをリリースし続ける必要があり、今回の Summit もそれが目的なので、当然と言えば当然です。 現時点では他社にこれほどの差をつけてしまっている M1 チップですが、Intel も消費電力を強く意識したAlder Lakeというプロセッサを開発しており、それを搭載したノートパソコンが来年の後半には発売される予定です。それがどこまで M1 と対抗出来るかは不明ですが、少なくとも6ヶ月間は、M1にとって「向かうところ敵なし」の状況が続くと見て間違いはないと思います。 M1搭載のMacが、旧型Macからの「買い替え需要」を喚起するのは当然ですが、どのくらい「Windows パソコンからの切り替え需要」を掘り起こすかが、今後のパソコン市場の動向を見る上でとても重要な鍵を握ります。 これまで Windows パソコンを標準として使ってきたエンタープライズ市場が、ウェブ・アプリケーションの進化により「Windows アプリ」への依存度を大きく減らしていることを考えれば、Mac や Chromebook が Windows パソコンから一気に市場を奪っても不思議はない環境は十分に整っていると言えます。 ネイティブ・アプリ(特定のOSに向けて作られたアプリ)の市場で勝負している mmhmm で働いている私としては少し複雑な気持ちですが、「ウェブ・アプリケーションをいかに心地良く、安全に走らせることが出来るか」がパソコンを選ぶ時にもっとも重要な指標になりつつあるのです。 Swipe Anime 開発日誌 mmhmm に開発者として参加したことをきっかけに、開発意欲が湧いて来たので、長年放置してあった、Swipe と VideoShader に手を入れ始めています。どちらも結構コードが古くなってしまったので、基本的には全面描き直しを行っています。 VideoShader の方は、OpenGL で書かれたものを Metal で描き直した上で、Apple が CoreImage の一部として提供している Image Filter を使えるようにまではしたところで、mmhm の仕事が忙しくなったので、放置してあります。 Swipe の方は、合間を見つけながらコツコツと進めており、来年の頭には Swipe Anime という iPhone/iPad アプリとして公開する予定です。Swipe には元々、Swipe Engine と呼ばれるアニメーション・エンジンと、Swipe Studio というオーサリング・ツールから構成されていましたが、Swipe Anime も同じ構成で、アニメーション・エンジンである Swipe Engine 2.0 とオーサリング・ツールである Swipe Anime から構成されています。 Swipe Engine 2.0 は、Swipe 言語の仕様を基本的には踏襲していますが、実装はまったく別物で、CALayer (iOS のアニメーション・フレームワーク)だけでなく、Metal を使って GPU に直接アクセス出来るように設計してあります。特に力を入れているのは、ディズニー・アニメ風のアニメーション(動き)を簡単に実現する仕組みで、そこが今月に入ってようやく安定して動くようになりました。 Swipe Studio は、「動く漫画」を実現しようと数年前にスタートしたプロジェクトですが、実際の漫画家にコンテンツを作ってもらうとなると、「鶏と卵」問題など色々と難しいこともあり、一度ビジネスとしてはリセットをかけました。
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