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高野孟のTHE JOURNAL Vol.473 2020.11.23
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1074》
「インド太平洋」は中国を含めた軍縮の枠組み?
ーー何のこっちゃ?という田中明彦らの提言
【2】《CONFAB No.473》閑中忙話(11月15日~21日)
【3】《FLASH No.384》
菅首相はおっかなびっくり“地雷原”を歩む心境
か
ーー日刊ゲンダイ11月9日付「永田町の裏を読
む」から転載
【4】《SHASIN No.417》付属写真館
■■ INSIDER No.1074 2020/11/23 ■■■■■■■■
「インド太平洋」は中国を含めた軍縮の枠組み?
ーー何のこっちゃ?という田中明彦らの提言
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10月23日付「朝日新聞」の第2社会面にいささか不思
議な30行ほどの記事が載った。「『インド太平洋、軍縮
提唱を』/有識者、政府に安保政策提言へ」と題したそ
の記事の全文は次のとおり。
▼米中対立が深まる中、政策研究大学院大学を中心とす
る産学連携の有識者グループが、菅内閣への外交・安全
保障政策の提言をまとめた。日本が米国と連携して進め
る「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を深
め、中国を加えた軍縮の枠組み作りを率先することなど
が柱。政府の来週申し入れる予定だ。
▼外務、防衛など関係各省もオブザーバーとして関わっ
たこの提言は、各大国の米国とソ連が対立した冷戦期の
ような軍縮の枠組みが、中国や北朝鮮などの軍拡で緊張
を増す現在のインド太平洋地域にないと指摘。そのうえ
で、「緊張緩和の第一歩」として、互いの国を射程に入
れる中距離ミサイルについて、「米中ロ(場合によって
は英仏印パキスタン)の参加を得て抑制を目指す、軍備
管理の枠組み構築を提唱すべきだ」と日本政府に求め
た。(編集委員・藤田直央)
一読して、何を言っているのか分からず、頭が混乱す
る。「自由で開かれたインド太平洋」と言えば、本誌
No.1072で詳しく述べたように、当初はおどろおどろし
くも「戦略」と銘打たれ、後に「構想」と薄められ、菅
政権に至ってはその構想も外して単なる「地理的概念」
と説明するに至るという変遷があるけれども、どう言い
換えたところでその本質は中国の東シナ海・南シナ海へ
の軍事進出を牽制するための包囲網の企てであることに
変わりはない。ところがこの記事によると、それが「中
国を加えた軍縮の枠組み」に発展するのだという。一体
どういうことなのか。
●田中明彦座長の研究会
調べると、朝日新聞が運営するウェブサイト「論座」
に、藤田編集委員によるこの提言を紹介解説した長い記
事があり、上記の新聞の記事はそこへの呼び水だったら
しい(その割にはウェブへのリンクも何もないのが奇妙
だが)。そのウェブ記事を読んで、ようやく「政策研究
大学院大学を中心とする産学連携の有識者グループ」と
いうのが、同大学の田中明彦学長を座長とする「インド
太平洋協力研究会」であり、それには同大学の教授陣だ
けでなく他大学やシンクタンクの学者、経団連や東京商
工会議所の国際協力部門の長がメンバーとして、また外
務・財務・経産・防衛の各省関係者もオブザーバーとし
て、参加していることが判明した。
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