今回は、BH叢書第2期の第1弾をかざるモミリアーノの主著から、その第1章の前半をお送りします。
第一章 ペルシア、ギリシア、そしてユダヤの歴史叙述
第一節 はじめに
ギリシア人もユダヤ人も、自分たちの文明のもっとも特徴的な部分のいくらかを、ペルシア帝国との関与のなかで発展させた。このことは近年ますます意識されるようになっている。だからつぎのような問いを立ててみても、不合理ではないだろう。すなわち、ギリシアの歴史叙述もバビロン捕囚後のユダヤの歴史叙述も、ペルシアの歴史叙述の伝統、あるいはペルシア帝国内のべつの文学伝統から影響をうけたのではないかという問いだ。
しかしこれはほんの一例であり、ユダヤとギリシアの歴史叙述を比較するさいには、これ以外にもたとえば以下の問いを提起できる――
(一)ギリシアの歴史叙述と聖書の歴史叙述の共通点はなにか。
(二)ギリシアの歴史叙述と聖書の歴史叙述のあいだにある主要な差異はなにか。
(三)紀元後一世紀にユダヤの歴史叙述が突如として終焉をむかえたのに、ギリシアのものが活発でありつづけたのはなぜか。
したがって、私の第一講義はつぎの六つの点にあてられる――
(一)ペルシア帝国の歴史叙述について。
(二)一般的にギリシアやユダヤの歴史家は、どれほどペルシア帝国の事情に通じていたのか。
(三)ギリシアやユダヤの歴史家にたいするオリエントの影響を、どのような点でみることができるのか。
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